しばらく誰も喋らなかったけど
最初に口を開いたのはれおだった。
その視線は、しゅんとに向いている。
しゅんとは一瞬だけ考えてから、首を振った。
私はそのやり取りを聞きながら
頭の中で次の段取りを整理していた。
——このあと、ラジオ。予定では
そうた、まなと、しゅんと、じゅのんが
出るはずだった。
タイミングを見て、私は口を開く。
れおとりょうきは個人仕事。
交代できてりゅうへい。
松田さんたちと相談だな、、、。
少しだけ空気が緩んだ。
私はその様子を見て、ほんの一瞬だけ安心する。
——今は、これでいい。
メンバーが前を向いてくれることが
じゅのんを休ませる一番の環境になる。
そう言うと、みんなそれぞれ動き出した。
楽屋の空気が、少しずつ元に戻っていく。
松田さん、社長には現状報告をして、
ラジオの変更もりゅうへいでOKが出た。
またじゅのんの様子を見て
今後のスケジュール、変えないと…。
次の準備の話、ラジオの構成、移動時間。
私はそれを聞きながら頷いて
必要なところだけ拾っていく。
頭はちゃんと仕事をしているのに
意識のどこかが
さっき閉まった扉の向こうに置き去りのままだった。
鬼頭さんいるし、少なくとも今は一人じゃない。
それだけで、少しだけ胸の奥が緩む。
今は現場を回す。
それが私の役目。
私はスマホをポケットから出して、
一度画面を見て、また閉じた。
……今は、まだ送らない。
収録が全部終わって
少し落ち着いたタイミングで。
「何かあったら連絡してね」
それだけでいい。
それから、余裕があれば。
——余裕があれば、家、寄ろうかな。
そんなふうに考えながら
私はもう一度だけ深呼吸して
次の現場のため動き出した。












編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。