第4話

「帰りたくない日」
161
2026/05/22 05:50 更新
雨だった。




朝からずっと、しとしと音がしている。





中庭でも遊べないせいで、Paletteの中はいつもより少し静かだった。





フィリックスたちはゲーム。





ヒョンジンは窓際で絵。





ミナはソファでうとうとしている。





そんな中。





キュジンだけが、今日はずっと静かだった。
リュジン
リュジン
キュジン今日元気なくない?
ハン
ハン
たしかに
でもキュジンは「なんでもない」しか言わない。





昼過ぎ。
ジヒョ
ジヒョ
そろそろ帰る時間だよ〜
ジヒョが声をかける。




みんなが荷物をまとめ始める。





でも、キュジンだけ動かなかった。
イェジ
イェジ
キュジン?
呼ばれても下を向いたまま。
キュジン
キュジン
……帰りたくない
小さな声だった。




部屋が少し静かになる。




バンチャンは、その空気を壊さないように近づいた。
バンチャン
バンチャン
なんかあった?
キュジン
キュジン
……別に
即答。




でも、声が少し震えていた。





沈黙。





外の雨の音だけが聞こえる。





すると。





リュジンが、ぽつりと言った。
リュジン
リュジン
私も昔そうだった
全員がリュジンの方を見る。
リュジン
リュジン
家に帰ると息詰まる感じ
ぶっきらぼうに言う。





でもその声は、少し優しかった。





キュジンはギュッと袖を掴む。
キュジン
キュジン
……今日、お父さんとお母さん、また喧嘩してる
ぽつり。
キュジン
キュジン
朝からずっと……
誰も口を挟まない。





Paletteでは、無理に聞き出さない。





話したい時だけ話せばいい。





チェリョンは、少し離れた場所からその光景を見ていた。
チェリョン
チェリョン
(……みんな、ちゃんと待つんだ)
学校だったら。





「大丈夫?」
「元気出して!」

って、もっと慌ただしくなる気がした。





でもここは違う。





静かに隣にいる。





それだけ。
バンチャン
バンチャン
少し落ち着くまでここいる?
優しい声。





キュジンは、小さく頷いた。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

夕方。





雨はまだ降っていた。





リビングでは、みんななんとなく一緒に過ごしている。





誰も無理に明るくしない。





でも。





空気はちゃんとあったかい。
ニナ
ニナ
キュジン、これやる?
突然、シャボン玉セットを差し出す。
キュジン
キュジン
……室内だけど
ニナ
ニナ
小さいのならいける!
リュジン
リュジン
絶対怒られるでしょ
ジヒョ
ジヒョ
怒るよ?
即答。




でも少し笑っていた。





その空気に。





キュジンは、ようやく小さく笑った。





ほんの少しだけ。





でも確かに、いつもの顔に戻っていた。






その様子を見ながら、バンチャンは静かに息を吐く。
バンチャン
バンチャン
(……今日も、守れたかな)
next→

プリ小説オーディオドラマ