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🕯️リトルナイトメア3 ― 「囁く夢の終端で」
風の音も、波の音も、もう届かない。
世界は沈み、光は遠い。
灰色の霧の中を歩くのは、
ひとりの少女――ロウ。
その名を呼ぶ者はいない。
ただ彼女自身だけが、自分をそう呼んでいた。
彼女の隣を歩くのは、
フードをかぶった少年――アローン。
二人は互いの名も、声も、
まるで“誰かの夢の残り”のように、確かではなかった。
街は歪み、時は止まり、
空には巨大な眼が浮かんでいた。
それは見ている。
いつでも、どこからでも。
逃げる者、隠れる者、
すべての影を、静かに監視している。
ロウは夢を見る。
誰かが小さな灯りを掲げ、
誰かがその灯を奪われ、
そして誰かが、手を離された夢。
――名前のない少女。
――顔のない少年。
悪夢の連鎖は、終わっていなかった。
二人は廃墟の街を抜け、
沈んだ塔へと足を踏み入れる。
塔の中では、時間が溶けていた。
壁に映る影が、ふたりの姿を真似て動く。
まるで“過去の亡霊”のように。
奥へ進むたびに、声がする。
低く、遠く、壊れた音で。
「……戻れない……」
「……もうひとりは……どこ……?」
ロウはその声に導かれ、
古びた鏡の前に立つ。
鏡の中には、紙袋をかぶった少年――モノがいた。
彼の後ろには、小さな影――シックス。
二人の姿が、何度も繰り返されては、
霧のように消えていく。
アローンは一歩前へ出る。
鏡の表面に触れた瞬間、世界が割れた。
黒い液体が床を覆い、
光の粒が逆流する。
音が反転し、夢と現実の境が溶けていく。
ロウはアローンの手を掴む。
「離さない」と言いたかった。
けれど、その声はもう、誰にも届かない。
最後に見たのは――
遠くで沈む塔と、
その中で微かに灯る、ひとつのライターの炎。
そして、闇がすべてを包み込む。
静寂の中で、
誰かが、また目を覚ます。
それが新しい悪夢の始まりだと、
まだ誰も知らなかった。












編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。