第180話

帰りたい場所【ゲン/切甘】
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2026/02/12 08:31 更新



* side ゲン / 現代






彼女は 世間じゃ誰もが知っている
いわゆる若手実力派女優だった。




「あなたちゃん、明日の夜ってどうしてる?」




こんなことを
男の俺が聞くのなんて単純。

ただ、
会いたいから。




「あ、ごめん。あさって朝から撮影だから
明日の夜はパス」




予定を聞いた理由を
言ってもいないのに、速攻断られる。


ドイヒーすぎでしょ、ほんと。





俺らの始まりは
ある収録の打ち上げだった。



あなたちゃんのことは
前から気になってた。


綺麗で、けどそれだけじゃない
不思議な魅力があって。



そして、打ち上げの途中
周りには聞こえないように

女優としての夢を
こっそり語ってくれたその瞬間

俺の心は、
完全に持っていかれてた。



あなたちゃんも、
俺に心を許してくれてたと思う。



だから俺は、
ほんの少しの勇気とお酒の力を借りて
自分から彼女を誘った。




すべてが終わったあと、
あなたちゃんはシーツの上でさらっと言った。




「ほら、芸能人同士だし
厄介なことになったら嫌じゃない?
だから、変に情が沸かないうちに
こういうのはやめておこうかなーって」




お手本みたいな笑顔とは裏腹に
言葉は酷く残酷だった。



それでも時々

あなたちゃんは
気まぐれに俺に会ってくれた。




「ゲンって、モテそうだよね。
おしゃべりも女の子の扱いも上手いし。
彼氏にしたら、
すぐ他の子のところに行っちゃいそう」




俺は、
どこにも行かないよ。


どこかに行ってしまうのは、
いつもあなたちゃんの方なのに。



そんな日々が続いて、

俺も少しずつ
『それでもそばにいられるなら』と
考えるようになっていった。





─── それなのに、



テレビの中から
よく知ってる声が聞こえる。




「─── 私、小さい頃から、
欲しいものを欲しいって上手く言えない子で……」




バラエティ番組のインタビュー。

あなたちゃんは、

あのお手本みたいな笑顔で
自分のことを語っていた。




「いやいや、怖くって!
叶わないとか失うとか、手に入れる前から
想像しちゃうタイプなんですよ!」





すぐに


会わなきゃ、と思った。



また断られるかもしれない。

でももう、
そんなの関係ない。



この後の収録が終わったら
すぐに電話をして。


俺の想いを、
ちゃんと伝えに行こう って。






……けれど、
それは叶わなかった。


その日
降り注いだあの光によって。


俺も、あなたちゃんも
世界の全てが石になった。




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─── 3700年後




  石化から目覚めてすぐに
あなたちゃんの石像を探し出した。

けれど、
肝心の復活液は司の手の中。






「クッソ絶対ぇ犯人捕まえんぞ!」

「犯人捜しなどより今は重大な問題があるぞ。
ゲンが司の元に戻らなければ千空が殺される」



石神村、暗闇でマグマに襲われた俺は、
意識も絶え絶えな状態だった。



千空ちゃんたちには、俺が必要。



だったら、それを
利用しない手はない。




「俺に、約束してくれる?千空ちゃん
……復活液を一人分、分けくれるって」

「あぁ、できる。俺らならな」




翌朝、俺は
ボロボロの体を引きずって
司の元へ走った。


足がもつれても、血が滲んでも
止まるわけにはいかない。



これは、神様がくれたチャンスなんだ。

もう一度、
あなたちゃんに会うための。



全てを失ったこの世界で、
俺が思いをまっすぐ伝えるための。




「千空ちゃんは影も形もいなかった。
死んでるよ〜間違いなくね!」




俺は司に言った。
あの、お手本みたいな、笑顔を浮かべて。





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3700年越しの恋シリーズ ゲンver 🃏
前にも別なキャラで書いてたから…

そして、MrsGreenAppleの lulu. から着想して書きました🍏

🐰
  Thank you 🔦   
   るみゅ   ぼんちゃん  REOさん
ペガさん tsunakoさん
溢れんばかりの愛をありがとうございます🙇🏻‍♀️՞💓‪

ぼんちゃん もうすぐ50回だ…!⟡.·


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