side:kzh
叶「葛、葉……?」
葛葉「叶ッ…なんでッ……」
叶「なにしてんのッ……」
配信者仲間の俺たちなのに、俺はプライベート、いや、それ以上のことを叶に見られてしまった。
人の肉に食らいついて流れる血を体内に入れる悪魔。
まさか満月の夜、しかも吸血中に俺の1番嫌われたくない人に遭遇するくらいなら家で大人しくしておけばよかった。
動かなくなって冷たくなった人間を放って、逃げようとするが、昼にも動ける人間である叶には適わず、俺はそのまま腕を引っ張られた。
どこに行くのか分からないが、涙のせいで抵抗も出来ず、俺は叶の後をただ着いていくだけ。
見慣れたドアと見慣れた部屋。
葛葉「叶ッ…おれッ……」
叶「葛葉は本物の吸血鬼だったんだね……?」
葛葉「ぅんッ…そうッ……」
叶「……葛葉、俺はどんな葛葉でもすきだからそんなに泣かないで?」
葛葉「お前の好きと俺の好きはッ…違うからッ……」
叶「俺は葛葉を愛してる。愛してるの意味で好きだけど、お前は違うの……?あんなに匂わせといて…」
葛葉「うぅッ…ごめんなさいッ……俺も叶ッ…すきッ……」
叶「ふふ、良かった……。」
葛葉「叶ッ…叶ッ……」
必死に腕を伸ばせば、俺の背中ごと包み込んでくれる叶。
俺とお前は、今日から恋人……。
side:kn
葛葉「叶ッ…叶ッ……」
いつもなら嫌がるくせに今日は自分から手を伸ばしてくる葛葉。
葛葉が吸血鬼なんて昔っから知っている事だ。
勿論、満月の夜に血を吸うことも、今日夜出掛けることも。
俺は葛葉のことだったらなんでも知ってんだよ。
葛葉「叶……?」
叶「ふふ、葛葉可愛い。」
葛葉「捨てないでくれてッ…ありがとうッ……」
叶「うん、きっとお前が吸血鬼って知ったら、ライバーはみんな離れていっちゃうね……?笑」
葛葉「え……?」
もっと泣きな葛葉。
泣いてないとお前は俺にすがれないし、
泣かないと俺はお前に飽きちゃうから……笑
fin
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。