第22話

Memory
17
2020/04/05 13:44
じゃあ、話すわね。
私が最初にその事を聞いたのは、高校の入学式…。そう、あんたと出会うか出会わないかの頃よ。
荒木澄香
荒木澄香
怜美!
私は怜美を呼びかけようとしたけど怜美は両親と何か話してた。
上野怜美
上野怜美
でも、良かった。ここまで来れて。
怜美の母
怜美の母
ほんとにねぇ…。
怜美の父
怜美の父
そうだな…。
性格の悪い話かもしれないけど、私それを覗き見してたんだ。

中学の頃から親友だった怜美が何やら険しい顔をしてて、なんだか私、ほっとけなくて…。
上野怜美
上野怜美
あっ、ちょっと待って!
ふと怜美が私に気づいて咄嗟に両親から離れて私のところに気まずそうにだけど来てくれた。

でも今思えば、それが全部物語ってたんだよね。
上野怜美
上野怜美
おはよう澄香。
制服姿、可愛いね。
荒木澄香
荒木澄香
ああ…おはよう。
上野怜美
上野怜美
どうしたの?
…まさか、今の聞いてた?
荒木澄香
荒木澄香
いや、何も…何も聞いてないわ。
怜美の方が制服可愛いわよ。
上野怜美
上野怜美
そう。
なら良かった。
私はもうそれだけで入学式所ではなかった。
どうしても気になっちゃってもうちょっと踏み込んだ質問しようって時に…
上野怜美
上野怜美
きゃっ!
丸山丈
丸山丈
ああ…すみません!
あんたがぶつかってきて邪魔したこと、忘れてないからね。
まあいいわ、次行きましょう。
文芸部の先輩
文芸部の先輩
やあやあやあ、よく来てくれたねぇ!
ようこそ文芸部へ!
荒木澄香
荒木澄香
これからよろしくお願いします!
上野怜美
上野怜美
よろしくお願いします!
…うっ!
文芸部の先輩
文芸部の先輩
え、何?どうしちゃったの!?
上野怜美
上野怜美
ちょっと…頭が…うっ。
荒木澄香
荒木澄香
怜美?
ちょっと怜美どうしたの?
怜美は初めての部活で突然意識を失った。

…え?知らないって?

そりゃそうよ。優柔不断なあんたはこの時まだ部活決めてる真っ最中だったからね。

まあそんなことはどうでもいいわ。
怜美が救急車で病院に運ばれた時、私も一緒についてったわ。
怜美の父
怜美の父
ああ、澄香ちゃん…だっけ?
怜美のためにどうもありがとう!
怜美の母
怜美の母
助かったわ。
私この子になにかあったら…。
慌てる怜美のお父さんと、泣き崩れる怜美のお母さんを見てただ事では無いと思ったわ。

その時の私って性格悪かったからさ、聞いちゃったんだ。何があったのか。
怜美の父
怜美の父
落ち着いて聞いて欲しい。
実は怜美は小さい頃から重い病気を患っていて高校に入れたことも奇跡だって…。
荒木澄香
荒木澄香
…え?
本人はそのことを…。
怜美の母
怜美の母
知ってるわ。
でもあなたの反応を見るに、他の人には隠してるらしいわね。
医者
ああ、怜美さんの意識が回復しました。
それと、荒木さんって方いらっしゃいますか?
荒木澄香
荒木澄香
私ですけど…。
医者
怜美さんがお呼びです。
私は両親より先に怜美に呼ばれたの。
少し躊躇や戸惑いはあったけど、怜美に会いに行ったわ。
上野怜美
上野怜美
澄香…。
荒木澄香
荒木澄香
怜美…!
上野怜美
上野怜美
ごめんね…。
ちょっと貧血気味でね…。
好き嫌いしないで鉄分もっと取っておけば…。
荒木澄香
荒木澄香
もう、やめなよ。
上野怜美
上野怜美
え?
怜美が重い病気であると知ってなお今まで通りの日常を送るなんてとても私にはそんな芸当できなかった。
だから私は思い切って怜美に私が病気のことを知ってるって打ち明けたの。
上野怜美
上野怜美
そっか…。
もう、知ってるんだね。
上野怜美
上野怜美
でも大丈夫だよ。
私が死んでも澄香に何かあるわけじゃない。
だから…
荒木澄香
荒木澄香
何言ってんの!!!
荒木澄香
荒木澄香
怜美が死んでも私にはなんともない?
そんなことあるわけないでしょ!
荒木澄香
荒木澄香
何年一緒にいたと思ってるのよ!
上野怜美
上野怜美
ははは、澄香はおせっかいだなぁ…。
ははは…。
怜美は口では笑ってたけど、とても泣いていた。
上野怜美
上野怜美
ねえ澄香、お願いがあるんだ。
荒木澄香
荒木澄香
何?
上野怜美
上野怜美
このことは他のみんなには内緒にして。
私の命がある少しの間だけは…私に"青春"を見せて。
荒木澄香
荒木澄香
…分かった。
怜美の必死のお願いを私は…

聞けたかどうか分からないな。

でもただ一つ確かなことは…

その"青春"に、あんたが一役買ってくれたってこと。

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