あれからショウタ君は私と口さえ聞かなくなってしまった。
私は1人、大会のための小説の設定を作る。部活に出ることも無い、ホントに1人だ。
「この設定は…使えないよね…。」
もう、誰とも会いたくはない。本当に誰とも。
ただひたすらに、文章だけ書いていれれば、それでいい…
「ヒカリ!ご飯よ!降りてらっしゃい!」
お母さんが私を呼ぶ。
うるさい。私はただ1人で文章を書いていればそれでいいのに、いくら母親であっても今の子の私だけの時間に口を出さないで欲しい…。
「ほっといてよ…。」
「ヒカリ、なんなのその態度は。ご飯冷めちゃうわよ…。」
お母さんは穏やかな口調で話すが、穏やかだろうが厳しかろうが私には関係の無い話だ。まして…
「ヒカリ。」
お母さんが私の部屋のドアを開ける。
「後で降りるって言ったじゃん!」
「…ヒカリ、何かあったの?」
お母さんには全部お見通しか。流石は女の勘と言ったところか。
「実はね…私…私…」
私は感極まって泣いてしまった。
そして泣きながらお母さんに私のした失敗を全部話した。
お母さんはただ黙って私を抱きしめてくれた。
心が落ち着く。
「ヒカリ、一つだけアドバイスがあるとすればね、人間、時には絶対にどれだけ大事なものでも手放さなければならない時があるの。でも慌てずに、少しずつ考えて進めばいつかきっと、またそれを手に入れられる時が来るわ。」
…やっぱり、お母さんの言うことは違うな。
「さあ、ご飯食べましょ。お父さんがお腹空かせて待ってるわ。ほら、泣き止んでヒカリ。あなたはそんな弱い子じゃなかったはずよ?」
「…うん。」
私は涙を拭って食卓に降りた。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。