「では、失礼します。」
医者が出ていったと同時に、俺は今、病室で母と二人きり。
…恐い。恐いと勇気が天秤にかかっている。
今は勇気が少し下に傾いている。
伝えたいことは、俺がどうしたいか。…夢。
淡々とした口調。懐かし。
…俺は大丈夫、話せる。俺はもう莉紗じゃない。
最近、さとみに誘われて「莉犬」という名義でネット活動を始めた。
ネット活動といっても、twitter程度だが。
自分が昔何枚か撮った写真を投稿すると、反響があり、認められた気がして嬉しかった。
自分の価値観を押し付ける。
母さんが子供の頃、同じような教育をされたからだ。
どうして、
どうしてこうなった。
なんで自分の子供だと認められない
…違う。
俺は俺だ。
さとみが言ってくれたろ。
報告、か。何故報告しようと思ったのだろう?
心の裏が垣間見えて震えた。
…そっか。
知ってたよ。
認められないことくらい。
わかってたよ。
認められたいわけではなかったはずなのにな。
けど
なんでだろうな。
こんなにも苦しいのは
好きだからかな?
どうしようもないやるせなさ。
しばらくの間沈黙が続いた。
俺も母も喋る気にはなれなかったのだろう。
母。俺の大事な母。
「入院代がかかる。」
つまり死ねば生活は楽?
「俺 の いでにぃち んは死ん だ」
せ ゃ
もしかしたら生きてた?
「俺がいたせい?」
俺のせいだよ?
俺が死ねばよかったのに
結局、全部
リハビリも、
勉強も、
笑顔も、
「無駄……、、、」
言えなかった。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。