第17話

15Days
387
2022/01/05 11:00
「では、失礼します。」

医者が出ていったと同時に、俺は今、病室で母と二人きり。


…恐い。恐いと勇気が天秤にかかっている。

今は勇気が少し下に傾いている。




伝えたいことは、俺がどうしたいか。…夢。
莉犬
母さん…、
なに。

淡々とした口調。懐かし。


…俺は大丈夫、話せる。俺はもう莉紗じゃない。
莉犬
俺、…,ッ、にぃちゃんの…夢を叶えたい
は?
莉犬
ハァッッ……、
…莉紗、自分の立場わかってる?
莉犬
わかってるよ。わかってるから叶えたい…!
最近、さとみに誘われて「莉犬」という名義でネット活動を始めた。

ネット活動といっても、twitter程度だが。


自分が昔何枚か撮った写真を投稿すると、反響があり、認められた気がして嬉しかった。


それだけで、なれると思わないで
莉犬
思ってないよ、…ハアッ、ハッ、大丈夫だよ。
あんたのせいでー、お兄ちゃんは死んだのよー?
莉犬
ハ,ハアッ、事故には、ッ関係ないじゃん!!
莉紗が一緒にいたからよ
莉犬
だからって…!
あんたがいたからよ。
あんたが生まれてきたからよ。
お兄ちゃんはおかしくなったのよ。
じゃないと事故になんて遭うわけない。
だって、あの子は優秀な私の子供だから。
莉犬
おれ、も………
自分の価値観を押し付ける。

母さんが子供の頃、同じような教育をされたからだ。


どうして、


莉犬
どうして?
どうしてこうなった。
莉犬
なんで?
なんで自分の子供だと認められないなんで俺は生まれてきた。


…違う。


俺は俺だ。

さとみが言ってくれたろ。




報告、か。何故報告しようと思ったのだろう?



心の裏が垣間見えて震えた。


莉犬
俺は、…にぃちゃんの夢を叶えたいのは、恩返しでもあり、俺がしたいことでもあるんだ,ッッ、
だからw
莉紗は代わりにはなれないんだって
なったとしてもいらないのよ
ほら、働かざる者食うべからずって言うじゃない?
だからあなたはお金を減らすだけの存在。
私の中ではそのくらいなの。
きっと私が死んでも私は同じことを思うわ


…そっか。


知ってたよ。



認められないことくらい。


わかってたよ。


認められたいわけではなかったはずなのにな。





けど
なんでだろうな。





こんなにも苦しいのは





好きだからかな?






どうしようもないやるせなさ。





しばらくの間沈黙が続いた。


俺も母も喋る気にはなれなかったのだろう。


とにかく、入院代って結構かかるときもあるから、そこは把握しておいてね。
またね。
母。俺の大事な母。



           「入院代がかかる。」
      つまり死ねば生活は楽?

「俺 の いでにぃち んは死ん だ」
    せ     ゃ 
          もしかしたら生きてた?
      

      「俺がいたせい?」

    俺のせいだよ?






         俺が死ねばよかったのに




莉犬
そう…なんだ
結局、全部 

リハビリも、


勉強も、


笑顔も、




「無駄……、、、」





言えなかった。



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