「失礼します。太田先生いますか?」
「お、月城。どうした?」
"月城"ってそんなによくある苗字じゃないよね?
思い出さないのかな、お姉ちゃんのこと。
よくそんな軽く"月城"なんて言えるよね。
「おい、どうした?」
「先生に話があります。ちょっと来てください。」
どこで話そう……
屋上は今閉まってるし……
あ、理科室なら誰もいないか。
「理科室?」
「先生なら入れるでしょ?」
「ま、まぁ……」
そう言って太田先生は鍵を開ける。
「で?話って?」
「お姉ちゃんのことについてです。」
そう言うと少し太田先生の表情が曇った。
やっぱり覚えてる。
「覚えていますよね?お姉ちゃん……月城來海のことを。」
「誰かなぁ。覚えてないね。」
嘘だ。
いつも太田先生は嘘をつく時、耳を触る。
多分それは自分でも自覚しているのだろう。
今、思わず耳を触ってしまいそうになった手を戻したのだから。
「本当は覚えてますよね?あなたの生徒ですよ?」
「そんなの覚えてるわけがないだろ!?俺はな、教師をずっとやってきてんだよ。何人もの生徒を見てきた。そんな12年前のことなんか……」
太田先生はしまった…という顔をしている。
12年前……やっぱり覚えてる。
「12年前。そうですよ、12年前です。覚えてるんじゃないですか。何人もの生徒を見てきた中でたった一人の自殺者、ですもんね。」
「な、なんでお前がそれを……」
なんでって……
でも、お姉ちゃんのことは言えない。
なんとなく言ったら悪い予感がする。
それに、何言ってんだって信じて貰えない。
「お姉ちゃんの遺言書に書いてあったんです。その件の真実もお姉ちゃんの気持ちも。」
「遺言書……」
まさか遺言書を残してるなんて思ってなかった?
まあ、実際残されてないけど。
「太田先生、本当にあれがお姉ちゃんがしたことだと思いますか?」
「……すまない。」
「本当にそう思ったんですか?」
すると、太田先生は奥の棚からあるものを取りだした。
茶封筒?
よく見るこの封筒を太田先生は私に渡して、教卓の椅子に座った。
「見てみろ。」
そう言われ、私は封筒にくるくる巻き付けてある糸をほどく。
中には……
写真?
何枚かの写真が入っていた。
何…これ……
その写真は全てを物語っていた。












編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。