あの日から。
長い時間が流れた。
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街は変わった。
人々の考えも。
ヒーローの在り方も。
ヴィランという存在への見方も。
少しずつ変化していった。
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でも。
あなたの中には。
変わらないものが一つだけあった。
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夜の帰り道。
コンビニの明かり。
遠くを走る電車。
少し冷たい風。
昔と同じ景色。
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「……」
立ち止まる。
ふと。
隣を見る。
もちろん。
誰もいない。
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「コンプレスさん」
小さく呼ぶ。
返事はない。
でも。
もう悲しくなかった。
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彼がいなくなった日。
世界が終わったように感じた。
自分の大切なものが。
全部消えてしまったようだった。
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でも。
時間が経って分かった。
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大切な人との時間は。
その人がいなくなった瞬間に消えるわけじゃない。
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言葉。
仕草。
考え方。
もらったもの。
全部。
自分の中に残っていく。
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「ねえ」
夜空を見る。
「ちゃんと覚えてるよ」
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初めて会った日のこと。
軽い冗談ばかり言っていたこと。
本当は誰よりも周りを見ていたこと。
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誰かに見てほしかった人。
誰かの笑顔を守りたかった人。
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「最後の観客」
そう呼ばれたことを思い出す。
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でも。
本当は違った。
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あなたが彼の舞台を見ていたんじゃない。
彼もまた。
あなたの人生という舞台を見てくれていた。
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「昔のあなたなら」
「きっとずっと泣いてた」
小さく笑う。
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「でも今は」
「ちゃんと前向いてるよ」
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それは。
彼との約束だった。
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生きること。
自分を嫌いにならないこと。
大切な思い出を、苦しみだけにしないこと。
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簡単じゃなかった。
何度も立ち止まった。
何度も寂しくなった。
それでも。
歩いた。
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ある日。
古いニュース映像が流れていた。
そこには。
派手な衣装の男。
人を惹きつける話し方。
舞台の上で笑う姿。
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「……やっぱり」
「似合ってるね」
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誰にも届かない言葉。
でも。
それでよかった。
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拍手はない。
観客もいない。
終わった舞台。
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それでも。
確かに。
そこには二人の物語があった。
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誰よりも愛されたかった少女。
誰よりも見てもらいたかった役者。
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正反対だった二人は。
互いの孤独を見つけた。
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そして。
ほんの一瞬だけ。
同じ舞台に立った。
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幸せな結末ではない。
二人で未来を歩くこともできなかった。
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それでも。
出会わなければよかったとは思わない。
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「ありがとう」
最後に呟く。
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その瞬間。
風が吹いた。
まるで。
誰かが笑ったような気がした。
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舞台の幕は下りた。
拍手はなかった。
歓声もなかった。
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それでも。
あなたにとって。
あの時間は。
一生忘れない。
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『拍手のない舞台で、君と』
完












編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。