人生に三度訪れると言われているモテ期の
記念すべき一回目の出来事を津々浦々に流ちょうに
鮮烈に印象に残っている今日の出来事を喋ると
この人は辛辣に突き放してきた
「オレは黄色髪の優等生を推すね」と
その話題から一切の興味も無くしてしまったらしくて
眉間に皺を寄せながら机に乱暴に置かれていた問題集
カラフルな付箋が貼られている部分を指で押えて
やり途中になっている問題を解き始める
シッシと追いやられてこっちもムッとしたので
ボソッとこぼれ落ちた小言がどうやら耳に入ったらしい
「は?」と相手の不機嫌を買ってしまった
くるくるとシャーペンを回して向こうの反論が始まる
情緒不安定すぎる…感情の変化が我ながらも激しい
思春期男子にムキになってしまっている自分も馬鹿だ
もしかしたら悔しかったのかもしれない
『おねえたん!』って小さな両手を挙げて
つぶらな瞳で見つめてくれて何処に行くにも一緒だった
分かってたよ、もう一人で生きていけるくらいに
自分の元から巣立てるくらいに立派に成長しているのも
ずっとずーっとお姉ちゃんに執着してくれなくなる
そんな未来とっくに見えてた
軒並み連なる家やマンションの
オレンジ色の温かい灯りをぼんやり眺めていた
日が沈みかかって月光が辺りを照らし始め
ポケットにあるスマートフォンを起動させると
大量の不在着信とLINEの通知
犬のキャラクターのスタ連と何十件も送られてた文面
やばい普通に既読つけちゃった
それに追い打ちをかけるように通知が飛んでくる
いっちょ前な口答えをしていたけど
中身は素直で従順、自分も謝りたいから「ごめんね」と
スマホのキーボードを打って返信する
公式LINE並の既読の速さだった
次の瞬間そう書いて送信しようとしたが
コツコツと徐々にこちらに近づく足音に気づき
スマホを握ったまま後ろを振り向いた
そこには怪しげな男性が
こちらを堂々と見下ろしていて
_____気づけばスマホが手から滑り落ちていた
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。