話の流れ的にさとみくんに引き渡すのが筋



その概念を凄まじい速さで覆してきた



先輩相手に口の利き方がなってないのに時差で気づく



「行くよ！」と向かい合う形になると上に抱き上げられ



完璧なスタートダッシュで走り出した

軽々とされた行為、一瞬の隙も与えてくれなかった



宙に浮かされてるような心もとない感覚にさせられる



走ってるからその度にズレ落ちてくる体



彼の腕の中から落ちたらやばいから首にしがみついてた

喘ぐように呼吸しながら前を向いたまま



喋りながら心做しか楽しそうに坂道を駆け下りている



元からカッコよかったけれど更に垢抜けたのは確か



容姿や雰囲気が変わっても彼の性格は変わっていなくて



着飾ろうと頑張っても飾りきれてない



ストレートな言葉も全て

足が地面につくくらいまでしゃがむんで下ろしてくれた



「ありがと」自分の影を踏んで辺りを軽く見渡した



住んでる地域だけどこの道は通ったこと一切なくて



新鮮な気持ちで目新しい景色を見回したけど



…デジャブみたいに人影2名登場

叱られた犬みたいな悲しげな目付きに変わった



瞳の奥には追い詰められた動物に似た哀しげな影が映る



有無を白黒はっきり付けなければいけないこの状況



渋々…首を縦に振ると肩に置かれていた手が



名残惜しげに離れていった

鼻のすする音が聞こえて慌てて口を閉じる



涙をいっぱい溜めて泣いてるのを悟られたくないようで



溢れないよう必死になっているのを見て罪悪感

焦りすぎて変な発言を口走ってる自覚あり



「そ、そうださとみくん！！」助け舟を求め



直近にいる弟に咄嗟な話題を振る
 


とりあえず少しでも先輩の笑顔を取り戻さなければ

これで先輩の様子は少しでも改善して…ない？

逆に悪化するという痛恨のミスを犯す



私の背中でこっそり声を押し殺して泣いてしまった

"だ…誰にもやらねぇ…よって///"



私の背中で涙を拭って慣れないセリフを口にしていた