「体がポカポカするんだけど。不思議ぃ」
「このお水美味しいねええ」
「顔真っ赤だけど大丈夫?」
「あなたこそ顔真っ赤だよう?」
鏡で確認すると私の顔も真っ赤だ。ぼんやりする頭で必死に考えた。
もしかして…このお水ってお酒?
店主さんが食器を回収しにきたタイミングで訪ねる。
「すいません〜このお水ってお酒ですか?」
「さようでございます。お茶ならこっちの急須にありますよ」
そう言うと店主は目の前の湯呑みを変えてお茶を注いだ。
「お酒をお飲みになったのならお風呂は落ち着いてからでお願いしますね」
「はい…」
「にしてもお客様はお酒が好きなんですね。この瓶を2人で空っぽにした方はあまりいらっしゃらないと思います」
「本当ですか?」
「この瓶は5人以上のお客様用の大きさなので、お気に召したのなら幸いです。ではごゆっくり」
そう言うと店主は出て行った。私はサーっと頭が冷える。
5人分のお酒を2人で飲むってだいぶヤバいような気がする。私もジニも水を飲む感覚で飲んでたから飲酒量が半端無いんじゃ…
ジニは完全に出来上がっている。
「ご飯美味しかったねえ」
「あのお水、お酒なんだって」
「お水がお酒になっちゃったぁ」
完全にふにゃふにゃの煮過ぎた水餃子みたいな表情で私が何か言っても聞いていない。
「お茶飲みましょう。二日酔いになるよ」
「大丈夫大丈夫。それより瓶はどこ言ったの?」
「持って行ったよ」
湯呑みにお茶を汲み直してジニの前に置いた。水分を沢山摂ればその分代謝も早くなる。明日二日酔いになるのが怖い。
ジニは眠気が来たのかそのままむにゃむにゃ言いながら壁にもたれて眠ってしまった。私は机の上を片付けると酔い覚ましに部屋を出た。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。