苦しむ海斗の頬を自身の頭で撫でるファル。
そう言って、笑顔を振り絞りながらファルの頭を撫でるが、痛みは相当なものであろう。
次第に海斗は冷や汗をかきだした──
そう言って平然と笑う彼女は、恐ろしい女だ。
相手の苦しむ姿を見る事に快楽を覚える、とんでもない悪趣味の持ち主だ。
そう、今回の奇妙な事件の主犯者は海斗の胸を掴む、紅葉の仕業だった。
彼女の能力は、半径10m以内にいる相手の心臓を架空の手で掴み、一瞬で殺す事ができる。
しかし、同じ異能力者相手には流石に瞬殺とまではいかないようだ。
ユウマは、ふと気づいた。
一緒に来ていたはずのフィアが居ない事に……
そう風花が言いかけた時───
何処か遠くの方から声が聞こえた。
声を聞いた二人は、思わず息を呑んだ。
海斗の言葉が更に二人の不安を煽る。
そして、声のする方へと体を向け直した。
次第に見えてくる人影……
声を聞く限り、間違いなくフィアは誰かに捕まっている。
そして、それが確信へと変わった────
海斗達の元へ連れてこられたフィアは、苦しむ海斗の姿を見た瞬間、青ざめ、そして駆け寄ろうとした。
だが────
フィアを連れて来た男、入間 圭人に腕を引っ張られてしまった。
二人がフィアを助けようとした途端───
ヴォオ──────
ヴォォオ─────────
風花達の足元に火が付き、容赦なく燃え上がるそれは、炎で作られた壁のようだった。
それはユウマが使った水の大壁に似たようなものであった。
風の使いは火が何よりも弱点である。
風を起こせば更に燃え上がってしまうからだ。
海斗が喋る間も、紅葉は彼の心臓を握り続ける。
その為、まともに喋る事が出来ない。
そう言いながら、ユウマは一枚のカードを取り出した。
言葉と共にカードを火に向けて投げた瞬間、大量の水か放出された。
その途端、一気に火が消火される。
そう言って風花は風を呼び寄せる。
その言葉と共に波風ががそよぎ、そして回転する。
次第にそれが、段々渦となって六階堂達に向かい、物凄いスピードで迫って来る。
六階堂は、少し離れたところで待機していた入間に向かって叫んだ。
海斗の言葉とほぼ同時に、入間がニヤッと笑う。
そう言って、六階堂達の近くまでフィアを連れていき……
そして彼女の背中を勢いよく押した。
フィアが押された瞬間、彼女の目の前に勢い良く迫る風の渦が見えた────






















編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!