第3話

第2話|銀のペンと月の使命
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2026/02/05 03:54 更新
光が消えたあとも、太宰はしばらく動けなかった。
太宰治
太宰治
……僕、セーラー……デカタンス……?
自分の姿を見下ろして、言葉を失う。
スカート。ブーツ。胸のブローチ。
どう考えても、現実とは思えない。
ネコ
ネコ
現実だ
黒猫――ルナは、はっきりと言った。
ネコ
ネコ
あなたは月の戦士。選ばれたの
太宰治
太宰治
選ばれたって……勝手すぎない?
太宰は、かすかに笑った。
太宰治
太宰治
僕は、戦うために生きてきたわけじゃない。むしろ……壊れる側の人間だ
ルナは、一瞬だけ目を伏せた。
ネコ
ネコ
それでも。あなたの中には、“守りたい心”がある 
その時。
怪物
怪物
……見つけた
低く、冷たい声。
振り返ると、さっきの怪物とは違う――
明らかに“意思”を持った女が立っていた。
黒いドレス。冷たい瞳。
闇そのもののような気配。
ネコ
ネコ
ダーク・キングダム四天王……の配下よ!
ルナが叫ぶ。
ネコ
ネコ
セーラーデカタンス! 気をつけて!
太宰治
太宰治
四天王……? もう幹部クラス?
怪物
怪物
新人にしては、豪華な相手ね
女は、くすりと笑った。
怪物
怪物
あなたの“文魂”。いただくわ
女が腕を振ると、黒いエネルギーが渦を巻く。
太宰治
太宰治
――っ!
太宰はとっさに後ずさる。
太宰治
太宰治
(無理だ……戦い方なんて、わからない)
心臓がうるさいほど鳴っている。
逃げたい。
戦いたくない。
ネコ
ネコ
太宰!
ルナの声が、強く響いた。
ネコ
ネコ
あなたは一人じゃない! そのブローチに、力がある!
太宰治
太宰治
力……?
胸のブローチが、淡く光る。
ネコ
ネコ
叫ぶの! 必殺技の言葉を!
太宰治
太宰治
いや、技名とか知らないんだけど!?
ネコ
ネコ
身体が覚えてるわ!
敵の攻撃が、すぐそこまで迫る。
太宰治
太宰治
――っ、もう!!
太宰は、目を閉じて叫んだ。
太宰治
太宰治
月輪・堕天回帰!!
その瞬間――
ティアラが、光の輪となって放たれた。
月の光をまとった刃が、一直線に飛ぶ。
怪物
怪物
なっ……!?
女は、驚いたように目を見開いた。
光が、闇を切り裂く。
――次の瞬間。
怪物
怪物
……っ、きゃああ!!
女は、悲鳴を上げ、闇の霧とともに消えた。
静寂。
風の音だけが、戻ってくる。
太宰治
太宰治
……倒した?
太宰は、その場にへたり込んだ。
太宰治
太宰治
や、やった……?
ネコ
ネコ
ええ。初勝利よ
ルナは、誇らしげに言った。
けれど。
太宰治
太宰治
……嬉しくない
太宰は、膝を抱えた。
太宰治
太宰治
誰かを倒すことで、誰かを守る。それが正しいって……僕には、まだわからない
ルナは、静かに答えた。
ネコ
ネコ
それでも、戦いは続くわ。あなたが望まなくても
太宰治
太宰治
……ひどい話だね
太宰は、空を見上げた。
そこには、変わらず優しい月が浮かんでいる。
太宰治
太宰治
月は、きれいなのに。やることは、こんなに残酷だ
ルナは、そっと言った。
ネコ
ネコ
だからこそ。あなたが選ばれたのよ
太宰治
太宰治
……皮肉だな
太宰は、小さく笑った。
その時――
遠くの屋根の上。
黒いマントの男が、静かにこちらを見下ろしていた。
太宰治
太宰治
(……彼は……?)
視線が合った、気がした。
だが、次の瞬間。
男の姿は、夜の闇に溶けるように消えていた。
太宰治
太宰治
……また、謎が増えた
太宰は、胸のブローチを握りしめる。
戦うことを、拒みたい。
それでも――
もう、引き返せない場所に、立ってしまった。
 ――月の戦士として。
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