なんて言うわりには、工藤理有は小学校の時にテスト学年で1位をとり続け、中学校の時は1位と2位を交互にとり続けていた。
それだから、勉強しないというわけではない。自分のやり方、勉強法で全ての範囲を今日終わらせる。それが目標。けれど、そんな簡単にできることではない。
そんな簡単にできることではないことができるのが、理有。いわゆる、賢いようだが自覚なんてない。それが、普通に当たり前のようにできていたのだから、ほとんどみんなも同じようにできると思っている。
HRが終わって、放課後。
私はバスケ部の人数が足りないということで、そこで練習を重ねた。
そう、あの時助けてくれた男の人がいた。多分、スポーツクラス。いやけど、プロクラスのどこかで見たような気がしなくもない。
「こっちにパス」
今は部活だ。そんなことに集中していられない。
サイドハンドパス、ジャンプパス、ショートドリブル、ループパス、ロッカーモーションドリブル。シュートセレクションをして、シュートレンジまで行き、シュートを決める。
たまに、アウト・オブ・バウンズをすることがあるが、すぐに状況を見て判断する。
いつのまにか、時間が過ぎていた。
ミーティングが終わった後に帰ろうとする。
私が帰ろうとして、体育館を抜けた時に後ろから声がした。
すぐに私だと分かった
理有は、堀北の手をとった。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。