敦が巨大ヘドロの様な怪物の元まで行き、威吹は異能者を倒すと言って居たが、どうやって倒すのだろうか。威吹の異能をようやく知れると思うと、多少興味はある。
そう呟く威吹に喰種達が襲いかかる。
しかし、威吹が触れてもいないのに、襲いかかった喰種達は地面へと勢い良く叩き付けられ、身動き出来ず、圧でもかけられているかのようにそのまま潰れてしまう。
それだけ言うと、威吹はフワッと空中に浮き、巨大な怪物を越えて何処かに行ってしまった。
喰種の方は大体片付いたが、敦や威吹の方は簡単には行かなそうだ。取り敢えず、巨大な怪物の元まで駆け付けると、人型の怪物がぞろぞろとゾンビの如く出てくる。
試しにナルカミを使って攻撃をすると、意外にも良く効いた。頭上から騒音がし、見上げると威吹と身を隠していた敵異能者が異能で戦っていた。その真下にはジェットコースターがあるのだが、敦が怪物の攻撃を避けながら上へ上へと登って行く。
このままでは、建物ごと倒れてしまう。
人型の怪物を倒していると、背後に威吹が降りてくる。派手に怪我をしている訳では無さそうだったが、威吹は無表情ながらも何処か顔色が悪い。
威吹が咳き込み、口元を手でおさえるが、血が出ている。吐血しているのだ。
威吹は軽く笑うと、自分の身体の状態について説明し始める。
威吹が異能を滅多に使わないと言ったのはその問題があったからなのだろうか。
何とか立っていられるらしいが、威吹は敵異能者に聞こえない程度の声で話し始める。
具合の悪そうな表情から打って変わって、何時も通りの笑顔を浮かべると、威吹は「敦」と名前を呼んだ。
敦が乗り物の上に乗ると、怪物はレールを支える支柱に攻撃し、構造物全体がぐらつき始める。すると、敦が乗っている乗り物が空中に浮き、怪物の周りを囲むように浮遊し始めた。怪物が暴れると、隣にあった観覧車と、ジェットコースターの構造物がこちらに倒れて来る。
倒れてくる構造物が緑色の光に包まれ、寸前の所で止まり、幸い下敷きにならずに済んだ。威吹が「今だ敦」と言うと、乗り物が怪物の口の中へ入って爆発し、敦が白いカケラを壊したのか、怪物の体内が光だして突風と共に消滅する。
寸前で倒れずに止まっていた観覧車と、ジェットコースターの構造物がギギッと動き、地面から引きちぎれるように全体が空中に浮き始める。そして、ゆっくりと捻れ、巨大な槍が二槍出来る。もはや原型を留めていない。
威吹が片手の人差し指と中指をクイッと下げた瞬間、浮いていた二槍が傀儡の敵異能者目掛けて勢い良く刺さる。
条件を満たしたのか、廃墟化した遊園地の風景は消え、次第に元の部屋の風景へと戻る。異空間から出られたのだ。
敦が聞くと、威吹は「方法はある」と即答し、言葉を続けた。
ベランダのドアを閉めたあと、タケと敦がテーブルの方に戻る。横目で威吹を見ると、さっきまで見せていた笑顔は消え、無表情のまま暗く冷たい眼差しで遠くを見つめていた。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。