午後2時頃にはあなたも空腹になったようで、
ホールのスイーツビュッフェに向かった。
チョコレートタルトを一切れ皿に盛り付けて
こちらに寄越してくるあなた。
甘いものの気分じゃないので断るが、
「美味しいのに…」となぜか諦めが悪い。
少々からかいのニュアンスでそう尋ねると
思いのほかあなたは真剣な表情で答えた。
肴じゃなくて魚だと勘違いされたアレか…
俺はあなたが幸せそうに
食事をしている姿を見るのが好きだ。
長く共に過ごしたからかは分からないが
どうやら妙なところが似てしまったらしい。
それに、俺の第一の好物は決して魚ではない。
俺が皿を受け取れば
満足げな笑顔を見せるあなたは、
まるで尻尾を振る子犬のようだった。
しゅんと眉尻が垂れ下がったり、
かと思えばパァっと顔が明るくなったり。
本当に素直で、なんて可愛い俺の娘。
"娘" には普通、あんな情は湧かないはずだがな。
心の中で自分を冷笑しつつ
俺はタルトを口に運んだ。
俺の言葉に素直に喜ぶあなたを撫でて、
それからまたタルトを一口。
…少しビターだとか言ったくせに
まったくもって甘ったるいじゃないか。
チョコレートの、ずっと口内に纏わりつくような
この執拗い甘さが好かないんだ。
それに比べて俺のあなたは
こちらから追い求めたくなるような "甘さ" で
気付けば俺を夢中にさせる。
甘味にこれっぽっちも興味がない俺を
ここまで夢中にさせる。
大好物だ…もう二度と手放せないほどに。
夢中どころじゃない、中毒だ。
ずっと味わっていたくてしょうがない。
俺は彼女の頬に手を添えて、
口端のチョコレートをぺろりと舐め取った。
ついでに唇に触れるだけのキスを落とすと
あなたは顔を真っ赤にして俺を見上げる。
赤らんだ顔を隠すように俯いてしまったあなた。
あぁもう本当に、
こうも愛らしいと我慢できなくなる。
頬杖をついてわざとらしい笑みを
浮かべながら尋ねれば、
もう答えは決まっているようなものだった。
あなたは急いでタルトを口に運ぶ。
昨日と同様、俺とあなたには
刺さるような好奇の視線が注がれている。
あちこちでヒソヒソと話す声が
地獄耳の俺には全て聞こえている。
そんなことを思いながら周囲に見せつけるように
あなたを愛でるのは、気分が良かった。












編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。