桃side
「声優になりたい」
その夢を諦めてから、一体どれほどの年月が経っただろうか
きっかけは本当に小さなこと。
小学生の時に見たアニメがきっかけである。
それから中学生、高校生と時を過ごし、本格的に声優を目指そうとした時。
父と母に止められた。
俺の育児を小学校卒業とともに放棄した両親が、久しぶりに家に帰ってきたかと思えば「夢をあきらめろ」の一点張り。
ネグレクトを受けた自分にとって両親はほぼ他人みたいなものだし、もちろん従うつもりなど無い。
けれど、心の何処かで両親を愛してしまっている自分がいるのだ。
中学でも高校でも友達関係に恵まれなかった俺は、信じ合える人間というのがよくわからなかった
きっと、友達作りが苦手だった俺が悪いのだろう。
最初は俺の顔の良さに何人か寄ってくるものの、すぐに飽きて離れていく。
親友と呼べるような人ができたらな、なんて。
一生叶わない夢だった。
夢を諦め続ける人生。
もちろん、声優の夢も諦めた。
長くなってきた襟足を切るために、美容室に行った
そこの店主はおおらかで、笑顔が似合う人だった
年は…外見からして俺とほぼ変わらない気がする。
ダメだ。こうやって冷たく接するから人が離れていくんだ。
ただ、彼は違った
そう言って彼はケラケラと笑ってみせた
初めてだった、こんなに気さくに話せる人
今度から、髪を切る際にはここに通うとしようか。
紫side
俺がそう言ったら、数人の子供たちが手を挙げてくれた
俺は、人間不信になった孤児の子供たちに、勉強を教えるような仕事をしている
義務教育期間の孤児の子どもたちは、その孤児院から近い学校に通わされるのが一般的である。
しかし、「孤児」という時点で、何らかの理由で人間不信になる子どもも少なからずいる。
その子どもたちに勉強を教えるのが、俺の役目なのだ
るぅとくんは、この孤児院の代表者みたいなものをやっているらしい
詳しいことは聞いたことがないのでよくわからないのだが。
るぅとくんとは社会人になってからの繋がりだし、まだちゃんとした交友関係は気づけてないのだが。
お互い、「孤児を守る仕事」に就いている以上、心優しい人だという認識を持って良いだろうと勝手に思っている。
今度、飲みにでも誘ってやろうか
黄side
僕は昔から、父の仕事を継ぎたいと思っていた
父は大きな孤児院を経営していて、昔から子供が大好きな大人だった
そんな父に憧れ、僕はかつて父が運営した孤児院を継いだ
まだ就任して日は浅く、ミスや迷惑をかけることが減らない
父が経営している時から関わりがあった、なーくんの助けもあり、今はなんとか孤児院を経営できている
そう言って職員室にひょっこりと入ってきたなーくんは、僕の机に缶コーヒーを置いた
まぁ、この孤児院に所属している職員は僕となーくんの二人だけなのだが。
(少なすぎる、世間は冷たい!by.NANAMORI)
なーくんは自分の分も買っていたのか、自らの手に持つ缶コーヒーを開けた
なーくんは何も言わずに、静かに笑って頷いてくれた













編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。