第56話

54,頑張って
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2024/03/30 17:18 更新





烏野が伊達工から第一セットを取ったことを確認して青城もアップを始める。



溝口コーチ
国見ボケ!足動かせ!アップになんねぇぞ!



あー英、怒られてやんの。



あれでもスタメンだから凄いよな。




一通りアップが終わり試合の開始を待つ。



国見英
…何?
あなた
あーいや、その…

英の方を見てたら目があった。




慌てて逸らしたけど、それに意味はなくて。
国見英
……ん?何?
あなた
えっと、









あなた
____頑張って、






国見英
…ん


私たちの会話は端から見たらぎこちないだろうけど。




私たちにはそれが良い。















私はコートに立てないから、できることは限られてるけど。



英だけじゃなくてみんなにも。



及川徹
なにか言いたそうだけど

話を振ってくれるとは思わなくて、焦って言葉を探す。




あなた
…三回戦、行きましょう
あなた
……。



なんでみんな黙るのさ。







急に話を振られたから慌てて答えたけど。




私が本当に言いたかったのは、いや、言わなきゃいけなかったのはこれじゃない。




あなた
____。






あなた
…信じてますよ



私ができる最大限の笑顔で言った。





みんなもそれに答えるようにたくましい笑顔を私に向けてくれた。












国見Side




初戦は多分そんなに頑張らなくても勝てそうな相手だから本気でやるつもりはなかった。





けど。






いつにもましてキョロキョロするあなた。




目が合ってもすぐに逸らされて。






焦れったくなって話しかけた。




「頑張って」





ただ一言、そう言われた。





いつもならこんな言葉、大して響かないのに。


あなたに言われるといつもと何かが違っていて。









公式練習が終わってまだ一人、ソワソワしているあなたに及川さんが声をかけると、急に話を振られて慌てたように「…三回戦行きましょう」
 

そう言った。






きっとあなたが言いたかったことはそれじゃない。






それをみんなが分かっていたからこそ誰一人として言葉を返さない状況が生まれて。


続く言葉を待った。







あなたはその空気を察してゆっくりと口を開きこう言った。
 


「信じてますよ」




いつも試合前に及川さんが言う'それ'と同じ言葉。






あんなにも眩しく、屈託のない笑顔を向けられたら誰だって嬉しいという感情は芽生えるはず。
 





だから今この気持ちを持ってるのは俺だけじゃない。と思う。












手を抜くつもりだったけどあなたに言われたら、頑張らないということはできないと思ってしまった。






勝ってまた、あの笑顔を見たいと思っている自分がいて。









あなたの'頑張って'は俺だけに言ってくれたものだから。





あなたのために勝ちたいと思えて。






俺にとってただのクラスメートで、ただのマネージャーでしかないあなただけど。










なんで今、急にそんな事を考えているのか自分でもよく分かっていない。







でも、あなたにかけてもらえる言葉が他の人から言われるものよりも嬉しくて。




話せる時間を求めているんだと思う。










俺があなたに対して抱く感情が何なのかは分からなけれど。






















俺がこういう気持ちに取り憑かれたのは多分この時から。

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