ある日、選択授業で音楽に出ていた私たちは一人ずつ歌を披露するという課題を出された。たまたまみんな、音楽をせんたくしていた。
たらいの番になり、みんながたらいに集中し始める。
たらいは真剣な目で歌を歌っていた
かっこいい…その一言につきる…その精悍な横顔に、胸がときめいた。
今なら、打ち明けてもいいかな。好きな人できたってセラ夫に報告したい。
少し恥ずかしながら打ち明けようとしたとき、運悪く一曲目を歌いきって静かになってしまった。
学校の授業では珍しいアンコールをもらいもう一曲歌うことになった。
タイミングを失ってしまった私は大人しくまたたらいを見ることにした。
ほんとにきれいに力強く歌うたらい。揺れる髪に光る汗。誰かに届けたいという強い眼差し。その一瞬一瞬がきれいに見えた。
すべて歌い終わるとクラス中から歓声が上がる
「雲雀、歌うますぎるだろ!どっかで習ったのか?」
「まじかよ!すげぇな!」
たらいの周りでクラスのみんなが集まる。
恥ずかしいという感情よりも本心が口をついてでた。でも返事がない。不思議に思ってセラ夫の方を見ると息もしていないんじないかっていうくらいたらいを見つめたまま固まっていた。
たらいに熱い視線を注ぐセラ夫に、嫌な予感がした。
まさか……。
たらいに見惚れている?
いや、きっと私の気のせいだ。そうであってほしい。そう願いながら私は恐る恐るもう一度声を掛ける。
ビクッとしながらセラ夫は勢いよく振り向く。その頬は桃色に染まっていて、胸騒ぎが止まらない。
聞きたくない、何も言わないで、私の感が当たらないで!
どうか、この予感が当たりませんように












編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。