《Geonwoo End》
人の少ない、レトロな遊園地。
ひとり佇むオオカミの着ぐるみ。
赤い風船が静かに揺れる。
「......ゴヌさん。」
私の声に、彼はゆっくり振り向く。
沈黙の中、自分の心臓の音が響いていた。
「ゴヌさん、私……あなたのことが好きです。」
右手を出す。ほんの数秒の間が、
何十分にも感じられて―――
右手に、着ぐるみの手の柔らかい感触。
恐る恐る握ると、私の目の前に、
赤い風船がゆらゆらと揺れていた。
ゆっくり着ぐるみの頭を外して、
ゴヌはにっこりと笑う。
「あなたの下の名前ちゃん、泣きすぎ。」
気付けば、涙で視界がぼやけていた。
「俺さ、」
と、彼が小さく笑う。
「最後まで信じてもらえないと思ってた。
だって、俺、言葉にするの下手だから。」
「……ゴヌさんの言葉、ちゃんと届いてたよ。」
「ほんと?」
「うん。駆け引きじゃなくて、ちゃんと“私”を見てくれてるの、わかってた。」
ゴヌはゆっくりと目を瞬き、
俯いて、両手で顔を覆った。
しばらくして、泣き笑いみたいな声で言う。
「やばいな……こんなの、反則だよ。」
顔を上げた彼の目が、涙で赤く染まっていた。
「俺、これから、ちゃんと隣で守るから。」
彼がそっと手を伸ばし、私の手を包む。
その指の温度が、胸の奥まで沁みていく。












編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!