さらに翌日の昼下がり。
紫苑は宇髄によって、またもや変装させられていた。
紫苑の格好は、隊服のシャツの上から上着をはおり、下はもんぺで頭には大きなベレー帽を被っているという感じだ。
小さなメモ帳も持たされている。
紫苑は大通りに潜り込み、歩いている人々に聞き込みを開始した。
紫苑は聞き込みを終え、屋根の上で頭の中の情報を整理する。
いきなり真横から声がした。
紫苑はうっすら微笑んで宇髄の言葉をなぞる。
シュッ
夜が近づいてきて、遊郭が大勢の人で賑わい始めた。
京極屋の向かいの建物の上から、紫苑は店の様子をうかがっていた。
しばらく時間がたった頃だった。
ガターンッ!!!!
と、大きな音がした。上の階からだ。
紫苑は急いで京極屋の上に跳んだ。
そしてなるべく目立たないように、音が聞こえた部屋の障子の前へ移動する。
中から、女の声がする。
紫苑は声がしっかり聞こえる位置まで近づき、耳をすませた。
そしてそこで、ようやく気づいた。
紫苑は透璃にそうことづけた後、さっきとは別の部屋の窓の外へと降り立った。
花魁らしき人物、いや、鬼と接触し気を失ったらしい善逸の様子が気になったのだ。
禿「善子ちゃん、善子ちゃん。」
中から禿の声がする。善逸がいるのはこの部屋で間違いないことを確認すると、紫苑は耳を傾け、部屋に誰もいなくなる瞬間を待った。
禿「それじゃあ、お大事にね。」
スっと襖の閉まる音を聞き取り、紫苑は窓の障子に手をかけた。
紫苑の目は、はっきりと"それ"を捉えた。
天井から伸びてきて善逸の背後に迫る、桃色の帯を…!
紫苑は障子を勢いよく開け、即座に善逸の元へと飛び込んだ。
そして帯から離れるように反対側の壁まで善逸を抱えて跳ぶ。
紫苑が振り返ってキッと帯を睨むと、帯はまるで蛇のようにうねうねと動き、揺れている。
どうやら彼はまだ帯に気づいていないのか、顔を赤くしてくねくねと動き、照れている。
そんな善逸を無視して、紫苑はぴしゃりと言う。
しばしの沈黙。
善逸は真っ青になってガクガク震えながらも、その帯を見つめる。
帯「ごちゃごちゃとうるさいね。あんたも鬼殺隊なんだろ?ちょうどいい…
二人まとめて攫ってあげるよ!」
帯が素早く伸びて、二人をまきとろうとする。
が、紫苑が刀を抜き帯を止めた。
紫苑はどこかにいるであろうムキムキねずみに呼びかけつつ、襲ってくる帯を受け流し、斬っていく。
善逸をかばいながら窓の方へ移動し、ちらりと外を見て透璃の姿を探す。
宇髄を呼んでもらうためだ。
紫苑はいろいろと考えながら、縦横無尽に動く帯を対処する。
しかし、次の瞬間。
帯が紫苑の横をすり抜け善逸の方へ─────
ドンッ!
善逸は宙を舞っていた。
…紫苑が、窓から押し出したのだ。
言い終わる前に、帯が紫苑を捕らえた。
帯「うふふ…つーかまーえた。」
「お前は顔立ちは悪くないねえ。美味しく喰ってあげるからねえ。」
そしてそのまま、紫苑は帯に吸い込まれるようにして消えてしまった。
善逸が見聞きしたのはそこまでだった。
背中から地面に落ち、人々の視線が彼に集まる。
そんな視線も気にならないほど、善逸は混乱していた。
どうした、大丈夫かと言う人を押しのけて、善逸は宇髄に助けを求めるため走り出した。
……まだまだ、夜明けまでは遠かった。

















編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。