荷物を家の中に入れ
部屋に設置する
お母さんがご飯を
作ってくれているのか
下の階からいい匂いが漂ってくる
剣持刀也の部屋に
こっそり忍び込み
写真を取り返そうと思ったが
無断で部屋に入る勇気が無く
説得する事にした
嘘だろ夕飯は剣持刀也が作った…?
主菜に副菜、お母さんに
負けない位の腕があるのは確かだ
正直言って口から
涎が垂れてきそうだ
真面目で何でもできるのか
本当凄いな…
…怖いけど
隣にいる剣持刀也を
横目で見る
顔は一応良いんだよなぁ
声も良いんだよなぁ
………………
……っえ、剣持刀也ってもしかして
モテてたりする…?
今思えば、同学年や他学年の生徒が
『剣持いる?』『とーや先輩いますか?』
とかなんか言ってる人いたな…
………………
剣持刀也と家族になって
しかも一緒に暮らしてるなんて
他の人に知られたら
大変なことになるんじゃ…
隣が剣持とはいえ
4人でご飯を食べ
気まずい雰囲気にはならず
一呼吸置いた。
いつもの癖で台所に行き
洗い物をしようと
レバーを引く
ジャー
誰もいないと思っていたら
背後から声が発せられ
肩が飛び跳ねる
いつの間に背後に…
流石剣道部…?
声を掛けられるまで
気配を感じなかった
え〜〜、何…無言
何か怖い…
剣持刀也に向けて
引き攣り、上がらない口角を
無理やり上げ
『何ですか?』と恐る恐る
視線を送ってみる
?!
出しっぱなしの水を止め
『 早くお風呂でも入ってきたら
どうですか? 』と言う
怯えないでください…か
顔に出てたか…
ぐるぐると手で頬を回し
口角を下げたり上げたり
表情筋をほぐす
テレビの前のソファで
くつろいでいる
お母さんとお父さん、
台所で黙然と立ち尽くしている
私と剣持刀也
同じ男女で家族でも
空気感は正反対
まるで天国と地獄のようだ
一度、シンクへ目を向け
洗い物をし始める手を止め
何か思い出したかのように
彼は振り返る
咄嗟に身構え
彼の口から発せられる言葉を
いつも通り受動的に待つ
彼はニッコニコの作り笑顔で
明らかに圧のある言葉を放った
体の向きをすぐに変え
早くその場から離れたい一心で
躓きながら
お風呂場へ向かった













編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。