『暮夜』夜、夜中のこと。
産まれたその瞬間から、
ヒト形態になることができた少女。
その神童の情報は瞬く間に広がり、
世間を騒がせた。
だが彼女は、テレビ局のインタビューに答えることも、
メディアに顔を出すことも無かった。
その後、姿を消したという。
その少女の名前はーーーー"月夜"。
別名、"秉燭"。
そう呼ばれる彼女の使命は、
"彼ら"にスポットライトを照らすこと。
そう、闇路と呼ばれる化物にーーーーーー
ドンッ…
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ヴー…ヴー…ヴー…
私はゲソを適当に縛って、玄関に向かって走り出す。
私は独り言のように呟いた。
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私は月夜。小学6年生、12歳。
まぁ小学校になんて通ってないんだけど。
世間からは、"秉燭"って呼ばれてる。
私は産まれたその瞬間から、
ヒト形態になることができた。
普通のインクリングであれば、14年かかるそれを、
私は産まれて1秒も経たぬうちに、成し遂げてしまった。
それに加え、超人的な身体能力。
そして、機転の利く頭脳。
それらを生まれつき持ち合わせていた私の情報は、
瞬く間に広がっていった。
世間は私を"神童"と呼び慕う。
テレビや新聞に取り上げ、話のネタにする。
「凄いね」「神の子だ」と賞賛する。
正直全然嬉しくなかった。
私は目立ちたい訳じゃない。
私だって、みんなと同じ1人のインクリングだ。
普通の小学校生活を送りたい。
ずっとずっと、そう思って生きてきた。
でも、こんな私が小学校に馴染めるはずも無く、
私はすぐに不登校になった。
ある日、そう言われた。
名も知らない、"彼"に。
そして私は加入した。
闇路を捕獲し、
人々の生活を守る政府公認の組織…
『ノーチェ』に。
灯りを握って、チーターを照らす"秉燭"としてーーーーー
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。