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第5話

第5夜「月夜」
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2024/09/22 13:33 更新
月夜(つくよ)
月夜(つくよ)
貴方も、─────チーターなんでしょう?フウ。



















風(フウ)
風(フウ)
─────あははっ、さっすがノーチェの"秉燭へいしょく"ちゃん?
風(フウ)
風(フウ)
…大正解
フウは微笑みを絶やさない。
一体、何が面白いのだろうか。
月夜(つくよ)
月夜(つくよ)
フウ、あなた…
風(フウ)
風(フウ)
つぐ、ほら…ここにチーターがいるよ?…捕まえなくていいの?
風が口角を吊り上げたその時。
私の横を、"何か"が通りすぎる。
私は見を翻してそれを避けた。
それは──────シューターの弾。
月夜(つくよ)
月夜(つくよ)
…っ、!
風(フウ)
風(フウ)
ひゅー、避けれるなんてさっすがぁ
フウは口笛を鳴らしながら、
私にシューターの照準を合わせる。
ここはブキ使用禁止区域。
フウも結局は"彼ら"と同じなんだと、苛立ちを覚えた。
風(フウ)
風(フウ)
私はなんでも使える…どんなブキも、どんなスペシャルも
風(フウ)
風(フウ)
ほら早く、"秉燭へいしょく"ちゃんの本気…見せてよ────!!
バリアに包まれ、右手にウルショを構えたフウが私に襲いかかる。ああ──────










月夜(つくよ)
月夜(つくよ)
…甘いわね
 








ガシャン…!!
風(フウ)
風(フウ)
…ッ、!!
月夜(つくよ)
月夜(つくよ)
ノーチェを舐めてるのかしら?
私はフウを押し倒していた。地面に勢いよく落ちたウルショとシューターは、バラバラに崩れている。
私は左手でフウの右手を抑え、空いた手で私とフウの手を手錠で繋いだ。
月夜(つくよ)
月夜(つくよ)
こんな力で私を殺せるとでも?
そんなこと────










月夜(つくよ)
月夜(つくよ)
──────フウは思ってないでしょうけど。










風(フウ)
風(フウ)
…え?
月夜(つくよ)
月夜(つくよ)
嘘はもうバレバレよ、フウ
月夜(つくよ)
月夜(つくよ)
貴方が100%の力を出していないことも、最初から私を殺す気なんてなかったことも…全部
風(フウ)
風(フウ)
…っ
月夜(つくよ)
月夜(つくよ)
嘘は通らないわ、本当のことを言いなさい
フウは目を伏せ、呟いた。
風(フウ)
風(フウ)
風(フウ)
風(フウ)
…ある、出来事があってね
風(フウ)
風(フウ)
わかっちゃったんだ、自分がどれだけ無力なのか
月夜(つくよ)
月夜(つくよ)
風(フウ)
風(フウ)
自分がどれだけ努力しても、埋まらない力の差もあるんだって…それで思ったの
風(フウ)
風(フウ)
──────力が欲しいって
風(フウ)
風(フウ)
大切な、妹を守れる力が……
月夜(つくよ)
月夜(つくよ)
…!!
わかってしまう…その気持ち。
大切なヒトを守る為なら、自分さえも犠牲にして構わない…そんな気持ちが。
風(フウ)
風(フウ)
つぐと初めてあった時は、守らなきゃって思ったら身体が勝手に動いてた…
風(フウ)
風(フウ)
チーターが出るのを知っていたのは、チーター同士で内部で繋がりがあったから
風(フウ)
風(フウ)
…つぐに攻撃したのも、つぐがもしもチーターの私を庇っちゃったらって思って…
風(フウ)
風(フウ)
……ごめんなさい
今にも消えそうな、か細い声で呟く。
私は、こんなにも素敵で大切な友達を守るために…やらなくてはいけないことがある。
月夜(つくよ)
月夜(つくよ)
月夜(つくよ)
月夜(つくよ)
ありがとう、本当のことを伝えてくれて
私は立ち上がり──────倒れたフウの頭に銃を突きつけた。
月夜(つくよ)
月夜(つくよ)
大丈夫…私が、フウを利用するから
風(フウ)
風(フウ)
……え
月夜(つくよ)
月夜(つくよ)
この銃で倒されれば、貴方は牢屋行き
月夜(つくよ)
月夜(つくよ)
チーターに下される罰は、無期懲役
風(フウ)
風(フウ)
…っ
月夜(つくよ)
月夜(つくよ)
フウはもう、大切な妹を一生守れなくなる
月夜(つくよ)
月夜(つくよ)
話すことすら、できなくなるわね
風(フウ)
風(フウ)
…っ、つぐ…?
風(フウ)
風(フウ)
(さっきとは気迫が違う…
身体中が、怖い、って震えてる)
風(フウ)
風(フウ)
(これがつぐの…本性…?)
風(フウ)
風(フウ)
…つぐ、っ…?
月夜(つくよ)
月夜(つくよ)
私の言うことを聞きなさい
風(フウ)
風(フウ)
…!?
月夜(つくよ)
月夜(つくよ)
フウは、まだチーター達に、
アナタがノーチェ側だと気づかれていない
月夜(つくよ)
月夜(つくよ)
だとすれば、フウには利用価値があるのよ
月夜(つくよ)
月夜(つくよ)
…チーター達から情報を盗んで、
私に渡す…フウなら簡単でしょう?
風(フウ)
風(フウ)
…っ、私が…?
月夜(つくよ)
月夜(つくよ)
そうよ
月夜(つくよ)
月夜(つくよ)
それに…そうね、フウが私に協力してくれないならば──────貴方の妹を殺す
風(フウ)
風(フウ)
…ッ!!
月夜(つくよ)
月夜(つくよ)
この間、会ったの…貴方の妹に
月夜(つくよ)
月夜(つくよ)
雰囲気は似ていないけど、
目元がそっくりだったから直ぐに分かった
月夜(つくよ)
月夜(つくよ)
念の為、あの子の鞄にGPSを付けておいたの
風(フウ)
風(フウ)
…ッは…!?
月夜(つくよ)
月夜(つくよ)
だから家はもう分かってる
月夜(つくよ)
月夜(つくよ)
…フウじゃ私を止められないわよ────
風(フウ)
風(フウ)
ふざけんなッ、!!
フウが起き上がろうと身体を揺らす。
私はすかさずフウに再度銃を突きつけた。
風(フウ)
風(フウ)
そんなこと…っ!!
月夜(つくよ)
月夜(つくよ)
おっと、暴れないで頂戴
月夜(つくよ)
月夜(つくよ)
間違えて引き金を引いちゃうかも…?なんてね
フウは私を鋭い瞳で睨みつける。
そう、これでいい。
月夜(つくよ)
月夜(つくよ)
ここで、誓いなさい
月夜(つくよ)
月夜(つくよ)
…私に協力する、と
月夜(つくよ)
月夜(つくよ)
大切な妹を失いたくなければ、今!!
風(フウ)
風(フウ)
…っ……
風(フウ)
風(フウ)
風(フウ)
風(フウ)
わかり…ました
風(フウ)
風(フウ)
貴方に、協力します……
フウは、か細い声で静かに呟く。
フウの瞳からは、1粒の涙が零れ落ちていた。
月夜(つくよ)
月夜(つくよ)
(…本当に、妹さんの事を、大切に思っているのね)
月夜(つくよ)
月夜(つくよ)
(私も、そんなふうに生きたかった…)
私はゆっくり拳銃を下ろし、フウの横に腰かけた。
月夜(つくよ)
月夜(つくよ)
…フウ、ごめんなさいね
月夜(つくよ)
月夜(つくよ)
貴方を泣かせるつもりは無かったの
風(フウ)
風(フウ)
…つぐ……?
月夜(つくよ)
月夜(つくよ)
さっき言ったことは全部嘘よ
月夜(つくよ)
月夜(つくよ)
貴方の妹さんに会ったこともないし、
見たこともない
月夜(つくよ)
月夜(つくよ)
GPSなんてものも、付けてない
風(フウ)
風(フウ)
…!!
月夜(つくよ)
月夜(つくよ)
だから…心配しないで頂戴、ごめんなさいね
風(フウ)
風(フウ)
つぐ、どうして…?
月夜(つくよ)
月夜(つくよ)
私が貴方を脅して、利用すれば、
フウは被害者、私は加害者…
月夜(つくよ)
月夜(つくよ)
もしボスに見つかって収監されてもフウの罪、
少しは軽くなるでしょう?
風(フウ)
風(フウ)
…え…?
風(フウ)
風(フウ)
っ、でもそれじゃあつぐが!!
月夜(つくよ)
月夜(つくよ)
…フウの、その大切な家族を守りたい気持ち…
月夜(つくよ)
月夜(つくよ)
…とっても素敵だと思うの
風(フウ)
風(フウ)
…!!
月夜(つくよ)
月夜(つくよ)
ワタシはその気持ちを尊重したい
月夜(つくよ)
月夜(つくよ)
例えフウのした事が犯罪だとしても、
それが大切なヒトを守る為ならば…私は許す
風(フウ)
風(フウ)
つぐ……
月夜(つくよ)
月夜(つくよ)
…許す、というのは少し違うかもしれないわね
月夜(つくよ)
月夜(つくよ)
目をつむる、かしら



月夜(つくよ)
月夜(つくよ)
ワタシもアナタも、犯罪者よ




ヴー…ヴー…ヴー…

シリアスな雰囲気に似つかないバイブ音。
それが自分のイカフォンの着信だと気がつくと、血の気がひいた。
月夜(つくよ)
月夜(つくよ)
…電話…
月夜(つくよ)
月夜(つくよ)
…ボス、からよ……
風(フウ)
風(フウ)
ノーチェの、ボス…?
月夜(つくよ)
月夜(つくよ)
…っ、こんなタイミングで…!
風(フウ)
風(フウ)
つぐ、もしかして…ッ
月夜(つくよ)
月夜(つくよ)
───大丈夫よ、いつも通り振る舞うから…静かにしていて
ボスにこの事がバレてしまえば、私はすぐさま処分されるだろう。勿論、フウも同様に。ああ、無期懲役なんかでは許されないかもしれない。
最悪、命が消えてしまうかもしれないんだ。

私は震える手で、イカフォンの画面をタップした。
月夜(つくよ)
月夜(つくよ)
…もしもし、こちら"秉燭へいしょく"
月夜(つくよ)
月夜(つくよ)
ボス、どうされました…
─────秉燭へいしょく、今の話…聞いていたよ
月夜(つくよ)
月夜(つくよ)
ッ!!
風(フウ)
風(フウ)
…!!
本当ならば、君達を今すぐ捕えなくてはいけない
…でも、





私も2人の気持ちを尊重したい…そう思うんだ






2人
!!
フウ…と言ったかな?
風(フウ)
風(フウ)
…はい
私の声…覚えているかい?
 君は3年前の、"あの子"だろう?
風(フウ)
風(フウ)
…っ!!
月夜(つくよ)
月夜(つくよ)
…3年前のあの子……?
君のその気持ちは本物だ
これからも、秉燭へいしょくのサポートをして欲しい…
良いだろうか?
風(フウ)
風(フウ)
風(フウ)
風(フウ)
…勿論、です…
風(フウ)
風(フウ)
本当にありがとうございます、あの時も、今日も…
礼は是非とも行動で返して欲しい…頼んだよ
風(フウ)
風(フウ)
はい…!!
月夜・・をよろしく頼む
ツーツーツー…
月夜(つくよ)
月夜(つくよ)
(フウとボスは知り合いなの…?)







風(フウ)
風(フウ)
…つぐ
月夜(つくよ)
月夜(つくよ)
…!!、…なに?
風(フウ)
風(フウ)
──────ありがとう
月夜(つくよ)
月夜(つくよ)
…!!
風(フウ)
風(フウ)
これだけ、言いたかった
フウは優しく微笑む。
空には大きな満月が、宝石の様に輝いていた。

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