第14話

第十三話
70
2026/02/21 13:08 更新

紫乃

拠点の地下フロア。

紫乃は一人、補助端末の前に座っていた。

メインモニターとは別系統。

バックアップログを確認している。

紫乃「……変だな」

微弱な通信履歴。

本当に小さい。

通常ならノイズ扱いで消えるレベル。

でも、紫乃は違和感を覚えた。

画面に表示される。

outbound micro-signal
frequency masked
origin : auxiliary channel

紫乃の指が止まる。

紫乃「補助回線……?」

それは、自分の管理しているラインだった。

上階から笑い声が聞こえる。

匠海と京介の声。

大夢の柔らかい相槌。

理人の落ち着いた返し。

洸人の低い声。

柾哉のまとめる声。

いつも通り。

守りたい光景。

紫乃はログを深掘りする。

すると、時刻が並ぶ。

・洸人フェーズ2終了直後
・大夢依存指数急上昇時
・匠海真実開示直前

すべてのタイミングで、

同じ微弱送信が発生している。

紫乃「……なんで」

冷や汗が落ちる。

authentication key : shino.sub

紫乃の呼吸が止まる。

自分のサブキー。

でも。

自分は送信していない。

紫乃「嘘だろ」

さらにログを解析。

そこに一文。

emotional spike synchronization successful

紫乃の背中に冷たいものが走る。

つまり。

フェーズで誰かの感情が大きく揺れた瞬間、

そのデータが

紫乃の回線を経由して

外へ送られていた。

無意識に。

知らないうちに。

紫乃の頭に浮かぶのは、

大夢の笑顔。

理人の視線。

洸人の違和感。

柾哉の覚悟。

匠海の涙。

京介の強さ。

紫乃「……俺が」

声が震える。

紫乃「媒介になってた?」

そのとき。

端末が勝手に起動する。

画面が黒く染まる。

administrator access
thank you, shino

紫乃の目が見開かれる。

紫乃「誰だ」

you were never the target
you were the bridge

画面が乱れる。

ログが消去される。

証拠が消えていく。

紫乃は必死に保存を試みる。

でも間に合わない。

最後に残った一文。

final phase requires direct host

紫乃の喉が鳴る。

“直接の宿主”。

つまり。

今までは媒介。

次は――

誰かが“本体”になる。

上階から、大夢の笑い声が聞こえる。

紫乃は立ち上がる。

階段へ向かう。

でも、足が止まる。

言うべきか。

まだ確証がない。

でも。

時間がない。

紫乃(小声)
「……誰が、選ばれるんだ」

画面の残像。

selection in progress

暗転。

続く。

プリ小説オーディオドラマ