第15話

第十四話
71
2026/02/22 13:03 更新

微熱

拠点は、静かだった。

あの日以来、フェーズは発動していない。

でも誰も「終わった」とは言わない。

大夢はいつも通り笑っている。

理人の隣に座り、
匠海の軽口に小さく笑い、
京介のツッコミに肩を揺らす。

完璧な、日常。

でも。

理人だけが、違和感を持っていた。

理人「大夢」

大夢「ん?」

理人「さっき、俺の名前呼んだ?」

大夢は首をかしげる。

大夢「呼んでないよ?」

理人の眉がわずかに動く。

確かに聞こえた。

イヤーモニター越しに。

ノイズ混じりで。

『……りひと』

そのとき。

地下フロア。

紫乃は端末を睨んでいた。

ログは消されたはずだった。

でも。

新しい通信がある。

outbound spike detected
host signal unstable

紫乃の呼吸が止まる。

紫乃「……始まってる」

送信元。

特定不能。

でも。

感情波形が一致している。

フェーズ2で記録したデータと。

上階。

大夢が突然、手を止める。

理人「どうした」

大夢「……なんか、あつい」

額にうっすら汗。

洸人が立ち上がる。

洸人「体温上がってる」

柾哉「フェーズ反応か?」

モニターが勝手に起動する。

direct host candidate : syncing

空気が凍る。

理人の心臓が跳ねる。

大夢の瞳が、一瞬だけ光る。

紫乃が階段を駆け上がる。

紫乃「触るな!」

全員が振り向く。

紫乃の顔は青い。

紫乃「今、切断したら危ない」

柾哉「何知ってる」

紫乃が一瞬、迷う。

でも。

言う。

紫乃「俺の回線が媒介だった」

静寂。

匠海「……は?」

京介「どういう意味や」

紫乃「フェーズ中の感情データ、全部俺経由で外に送られてた」

大夢が、ゆっくり紫乃を見る。

大夢「……しの?」

その声が、わずかに二重に響く。

sync 41%

理人がひろむの手を掴む。

理人「大夢、俺見ろ」

大夢の視線が揺れる。

理人の顔を見ている。

でも、焦点が合わない。

モニター。

host confirmed : t.h

空気が、止まる。

柾哉の拳が強く握られる。

洸人が低く言う。

洸人「最悪だ」

紫乃が一歩前に出る。

紫乃「俺が止める」

柾哉「どうやってや」

紫乃「中枢ごと切る」

理人が顔を上げる。

理人「それって」

洸人が答える。

洸人「宿主の意識も飛ぶ可能性高い」

沈黙。

大夢が、小さく笑う。

大夢「大丈夫だよ」

理人「黙れ」

大夢「僕、強いから」

でも声が震えている。

sync 58%

紫乃の手が震える。

紫乃「俺のせいだ」

柾哉が低く言う。

柾哉「今は責任の話じゃない」

洸人「選択の話だ」

モニターに表示。

full sync in 120 seconds

匠海が息を呑む。

京介が前に出る。

理人は、大夢の手を離さない。

紫乃は端末を開く。

柾哉が全員を見る。

リーダーの目。

タイマーが、減っていく。

119
118
117

大夢が小さく呟く。

大夢「理人」

理人「何」

大夢「もし、僕が変わっても」

理人「変わらせへん」

即答。

残り100秒。

続く。

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