o.t
拠点は静かだった。
大夢は休ませられ、理人がそばにいる。
洸人は壁にもたれ、柾哉はモニターを睨んでいる。
その前に立っているのは――
尾崎匠海。
匠海「次、俺かぁ」
軽い声。
でも、視線は真っ直ぐ。
モニターが起動する。
subject : o.t
protocol : truth extraction
trigger : k.fujimaki
藤牧京介が目を見開く。
京介「……俺?」
匠海が一瞬だけ固まる。
すぐに笑う。
匠海「はは、京介トリガーやって」
京介「笑い事じゃないだろ」
honesty enforcement begin
空間が歪む。
拠点の照明が落ちる。
匠海の体が硬直する。
匠海「……っ」
柾哉「匠海!」
洸人「触るな、精神系だ」
匠海の瞳が、わずかに揺れる。
suppress facade
expose core
匠海が、京介を見る。
真っ直ぐ。
逃げない目。
匠海「京介」
京介「何」
匠海「俺さ」
声が震える。
匠海「ずっと、怖かった」
空気が止まる。
京介の眉が動く。
京介「……何が」
匠海「置いていかれるの」
誰も、動けない。
emotional honesty 42% → 67%
匠海が笑おうとする。
でも崩れる。
匠海「京介、歌うやん」
京介「……は?」
匠海「俺、追いつけへんって思う時ある」
京介の呼吸が止まる。
匠海「明るくしとけば、いらんこと考えんで済むし」
声が、剥き出しになる。
匠海「でも本当は」
京介の名前を呼ぶ声が、小さい。
匠海「隣、奪われたくない」
truth exposure 89%
京介が一歩近づく。
京介「それが本音か」
匠海が目を逸らそうとする。
でも逸らせない。
システムが固定している。
匠海「やめろって……」
京介「俺が歌うの、嫌なのか」
匠海「違う!」
即答。
匠海「誇らしいに決まってるやろ」
涙が滲む。
匠海「でも、怖いねん」
trigger reaction detected
京介が、匠海の頬を両手で挟む。
京介「聞け」
匠海が止まる。
京介「俺が前出るのはな」
京介「お前がいるからだ」
匠海の瞳が揺れる。
京介「隣にいるのが匠海だから、安心して歌える」
システムの警告音が乱れる。
instability
facade rebuilding
匠海の呼吸が荒い。
匠海「……ほんま?」
京介「ほんと」
短い。
強い。
truth acceptance acknowledged
phase2 collapse
空間が元に戻る。
照明が復活する。
匠海がその場に崩れる。
京介が受け止める。
匠海「京介」
京介「何に」
匠海「俺、ダサかった?」
京介「今のほうがマシ」
匠海が笑う。
今度は、ちゃんと。
モニターが最後に光る。
o.t phase2 incomplete
all subjects processed
final phase pending
柾哉が低く言う。
柾哉「……最後が来るな」
洸人が画面を見つめる。
administrator access unlocked
空気が、変わる。
続く。












編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。