第11話

第十話
90
2026/02/18 13:30 更新

t.h

拠点は、いつも通りだった。

モニターは静か。
空気も落ち着いている。

洸人も意識を取り戻し、柾哉が横で腕を組んでいる。

誰も声を荒げていない。

――なのに。

ひとりだけ、異様に静かだった。

高塚大夢。

ソファの端に座り、指先をじっと見つめている。

理人「大夢?」

柔らかい声。

大夢が顔を上げる。

大夢「ん?」

笑っている。

完璧な笑顔。

理人「大丈夫?さっきから全然喋ってないけど」

大夢「うん、大丈夫だよ」

その声が、少しだけ薄い。

その時。

モニターが小さく点滅する。

next subject : t.h
emotional amplification protocol

洸人が眉をひそめる。

洸人「……大夢」

柾哉も画面を見る。

柾哉「今度は大夢か」

大夢は立ち上がる。

大夢「へえ、僕なんだ」

あまりに冷静。

理人が一歩近づく。

理人「大夢、ちょっと待って」

大夢の視線が、理人に向く。

その瞬間。

画面が赤く変わる。

trigger detected : r.ikezaki
dependency index rising

洸人「……は?」

柾哉「理人がトリガー?」

理人が固まる。

理人「俺?」

大夢の呼吸が、少し速くなる。

でも笑っている。

大夢「理人は、関係ないよ」

モニター。

protect target at all cost
self-sacrifice parameter unlocked

洸人が舌打ちする。

洸人「最悪だな」

柾哉「感情増幅型だね」

理人「何それ」

大夢が理人の腕を掴む。

強い。

理人が驚く。

理人「大夢?」

大夢「理人は大丈夫だから」

理人「何が?」

大夢「僕が守る」

声が優しすぎる。

でも、目が揺れている。

dependency index 72%
increase

大夢の頭の中に声が響く。

「理人を守れ」

「理人が傷つく可能性を排除しろ」

「自分は不要」

大夢の指が震える。

大夢(心の声)
理人が無事ならいい。

僕は、どうなっても。

理人が大夢の肩を掴む。

理人「ちょっと待てって」

大夢が理人を見る。

その瞳に、異様な光。

大夢「理人、危ないから下がって」

理人「誰が危ないんだよ」

self-erase sequence primed

洸人が立ち上がる。

洸人「柾哉、止めるぞ」

柾哉「理人、離れろ!」

理人「離れへん」

即答。

大夢の体がふらつく。

dependency index 89%

大夢「……理人」

声が、崩れる。

大夢「ごめんね」

理人「は?」

大夢「守るから」

理人が強く抱きしめる。

理人「いらないよそんな守り方」

大夢の呼吸が止まる。

理人の声が、震えている。

理人「俺はお前の隣にいるんだ」

大夢の目から、初めて涙が落ちる。

index fluctuation detected
emotional override

洸人が息を呑む。

柾哉「……戻るぞ」

大夢の肩が震える。

大夢「僕、いなくてもいいって思った」

理人「バカ」

理人の額が、大夢の額に触れる。

理人「お前がいらないと困る」

大夢の呼吸が乱れる。

dependency index 40%
unstable

警告音が止む。

モニターが静かになる。

phase2 : t.h incomplete
trigger stabilized

大夢が崩れ落ちる。

理人が支える。

理人「大夢」

大夢は、弱く笑う。

大夢「理人、重い」

理人「うるさい」

モニターが再び光る。

remaining subjects : o.t

拠点が静まる。

柾哉が呟く。

柾哉「……終わってない」

洸人が低く言う。

洸人「次は匠海だな」

空気が、張り詰める。

続く。

口調ムズい。分からん。

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