第10話

第九話
88
2026/02/17 13:31 更新

phase2

白い光が、視界を焼いた。

次の瞬間――

音が消える。

重力が消える。

足元が、崩れる。

洸人「……っ」

目を開けたとき、そこは拠点じゃなかった。

無機質な白い空間。

壁も、天井も、境界もない。

ただ“空白”。

横を見る。

柾哉がいる。

柾哉「……洸人?」

洸人「いる」

短く返す。

でも、声が少し遠い。

空間の奥で、ノイズが走る。

低い電子音。

subject n.h
memory reconstruction begin

柾哉「は?」

洸人の顔色が変わる。

洸人「……来るぞ」

次の瞬間。

景色が反転する。

冷たい床。

鉄の匂い。

薄暗い部屋。

子どもの息遣い。

柾哉は目を見開く。

柾哉「……これ」

部屋の中央。

小さな背中。

まだ幼い、洸人。

拘束具。

腕に走るコード。

モニターに並ぶ数値。

adaptation rate 87%
emotional suppression active

柾哉の喉が鳴る。

柾哉「……実験、って」

洸人は目を逸らさない。

洸人「これがフェーズ1」

声が平坦すぎる。

幼い洸人が、何も言わず天井を見ている。

泣いていない。

叫んでいない。

ただ、感情が削られていく。

柾哉の拳が震える。

柾哉「止めろよ……」

洸人「無理だよ」

phase2 : overwrite sequence

空間が歪む。

モニターが赤く染まる。

target stability high
proceed to replacement

柾哉「置き換え……?」

洸人の呼吸が浅くなる。

洸人「俺の人格データ、上書きする気らしい」

柾哉「ふざけんな」

柾哉は前に出る。

でも、見えない壁に弾かれる。

バチ、と火花が散る。

柾哉「っ……!」

洸人「柾哉、下がれ」

柾哉「嫌だ」

即答。

幼い洸人の背中が、ゆっくり振り向く。

その目は、無機質。

感情ゼロ。

子ども洸人「不要感情、削除対象」

柾哉「……は?」

子ども洸人「リーダー依存値、増加」

柾哉の心臓が跳ねる。

洸人が、目を伏せる。

洸人「だから言っただろう」

柾哉「何を」

洸人「俺は、守られる側じゃない」

子ども洸人の瞳が赤く光る。

eliminate attachment trigger

標的表示。

柾哉。

柾哉「俺がトリガー?」

洸人「……多分な」

空間が震える。

拘束具が再形成される。

今度は、現在の洸人に向かって。

柾哉「やめろ!」

柾哉が腕を掴む。

洸人の体温が、低い。

洸人「柾哉」

柾哉「何」

洸人「俺の感情、消される前に」

柾哉の喉が詰まる。

洸人「ちゃんと、覚えとけ」

柾哉「黙れ」

柾哉は洸人の顔を掴む。

強引に視線を合わせる。

柾哉「お前の感情、俺が証明する」

洸人の目が揺れる。

初めて。

明確に。

子ども洸人が手を上げる。

エネルギーが収束する。

overwrite in 05

柾哉が、洸人を抱き寄せる。

柾哉「消させない」

04

洸人の呼吸が乱れる。

03

空間が崩壊し始める。

02

子ども洸人の瞳が揺れる。

01

柾哉「洸人!!」

衝撃。

閃光。

沈黙。

次に目を開けたのは――

拠点。

床に倒れている二人。

アラーム音。

他メンバーの声。

??「柾哉!!」

??「洸人、意識ある!?」

洸人の指が、わずかに動く。

そして。

ゆっくり、目を開ける。

視線が合う。

柾哉。

洸人は、かすかに笑った。

洸人「……依存値、増加らしい」

柾哉「……は?」

洸人「俺、まだ感情あるわ」

その瞬間。

モニターが再起動する。

phase2 incomplete
trigger unresolved

画面に、次の文字が浮かぶ。

next subject : t.h

静まり返る拠点。

続く。

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