自室のベッドに横になったルカが甘えたようにソフィーを呼んでいる。
その屈託のない笑顔を見ていると、入り口でしゃがみこんで叫びだしたい気持ちになった。
アドルナート公爵邸に帰ってきてから早数日。
ルカはもうソフィーにべったりで、誰がどう見てもわかるくらいの熱愛ぶりなのだが……。
――必死で探し回っていたルカを山奥の小屋で見つけたあの日、ソフィーはアルフレッドの制止も聞かずに部屋の中に飛び込んだ。ちらりと見えた窓の向こうでは、美人な女の子がルカに迫っていて居ても立ってもいられなくなったのだ。
別の女性とキスしたらルカが死んでしまうかもしれないだとか、ソフィー自身が苦しいからといった理由などではなくて――純粋な、嫉妬だった。
ルカを誰にも取られたくない。
突然飛び込んできたソフィーに、ジェシカは「あんた誰!」とか「勝手に入ってきてなんなの!」と当たり前だが憤慨していた。「黙っててください!」と怒鳴ったソフィーはルカにキスをして……、それから気持ちを伝えあって……。
冷めた声で突っ込まれた時の恥ずかしさといたたまれなさといったらなかった。
愛は美しいものだが、恋は人をちょっとだけバカにする。
ジェシカは森で倒れていたルカを拾って手当てをしてくれてたのだそうだ。
後日、じゅうぶんな謝礼をするとルカが言うと、ほっとしたような、残念な顔で頷いていた。
もしかしたら少しだけルカに惹かれていたのかもしれないと思ったが、ソフィーはルカの気持ちを信じた。ソフィーのことを好きだと言ってくれたルカの気持ちを……。
ベッドサイドからやや離れた場所に座ったソフィーにルカは不満そうな視線を向けた。
ずっとイチャイチャべたべたと引っ付かれるのだ。
これまで多くの女性に分散していた愛情がソフィーに一点集中で注がれている気がする。
観念したソフィーはルカの側に座りなおす。
おいで、と囁かれてベッドサイドに手をつくと、腕を引かれてルカのもとに倒れこんだ。
優しく笑ったルカがソフィーに口づける。
一日一回のキスをしなくてももう大丈夫なはずだ。
二人とも頭ではわかっているものの、
という思いから、一日一回のキスはやめられずにいた。
もしかしたら呪いが解けていなくて……なんてことがあったら後悔するだろうし、「一応」「念のため」「しばらくの間は」と習慣化してきてしまっている。
毎日キスをするたび、いろいろな気持ちになる。
ルカのことが大好きで大好きで幸せだったり、優しい気持ちになれたり、生きていて良かったと胸がぎゅっと切なくなったり、穏やかで愛おしい感情で満たされたり……。
柔らかく笑うルカの姿を見ているとソフィーも嬉しくなれる。
突然のプロポーズに目を瞬くと、ルカは照れたように言い添えた。
んんっと咳払いしたルカに見つめられる。
それだけでソフィーの心はきゅんと甘く疼いた。
今日も明日も明後日もキスをしよう。
愛を確かめ合うようにキスをした二人の側で、赤い光が優しく揺れているような気配がした。















編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!