空に星が輝き始めた頃、彼女はあの森を抜けた先にある草原で寝転び、うつらうつらしていた。
夢と現実の世界の狭間に落ちている彼女は色々なことを考えている。国にいたときまだ両親が近くにいて幸せだった頃、ずっと一緒にいた双子の兄の事……。
彼女は、兄と一緒に遊んでいる時間が好きだった。ただ笑いあって、なにも考えずに楽しめばよかった。
彼女が戦争へ行った理由は、ただ一人の兄を守るためである。あの日、各家で一人兵士を出さなければならないという命令が伝えられたのだ。
しかし、父親はもう年をとっていて戦地にいける状態でもなかったし、兄はとても体が弱かった。
だから、あなたが戦地へ行くしかなかったのだ……。でも、あなたは女性である。周りの男達に比べれば力も弱い。だから、役に立たなければすぐに帰れると思っていた。
しかし、皮肉なことにあなたには戦いの才能があった。帰ろうにも、自身の才能が足を引っ張る。
最終的には、好奇の目に耐えられなくなり逃げ出してしまったのだが……。もし逃げなければ、今は“幸せ”だったのだろうか?
そう思うと、衝動だけで突き進んできた今までの道が急に愚かなものに思えてきた。
あなたの頬に一筋の涙が伝った。心の奥に押し込めていたはずの後悔が押し寄せてくる。
後ろから知らない声がかかったのは、そのときだった。
あなたの後ろに、知らない男が立っていた。ねこの毛のように柔らかそうな金髪を持って、ほっそりと枝を連想させるように痩せ細った体。
驚いて飛び上がり、一歩後ろに下がるあなた。手にはしっかりと剣が握られている。
やれやれ、という表情をするレイト。あなたが構えている剣に対して、怯えた様子は見えていない。
あなたは、この目の前の男をじろりと睨む。見た感じ、何か危ないものを持っている様子はない……。
敵ではなさそう、と判断したのかあなたは一つため息をついてから剣をおろした。
ひょうきんな、どこかおちゃらけた声であなたに笑いかける男。しかし、あなたは警戒を怠らない。
キッと、まだ男を睨み付けている。何かがあれば、すぐに逃げられるように荷物の持ち手に手を伸ばしている。
冷静に突っ込むあなた。それもそうだ、目の前にいるこの男は、見た目だけならあなたと同年代に思えるほどに若々しかった。
実は童顔なだけで大人なのだろうか……そんな考えが、あなたの頭のなかを巡る。
それが当たり前、というように笑う男。それに釣られるようにして、あなたも表情が緩みそうになる。しかし、すぐに表情を元に戻してあなたは気になっていたことを尋ねた。
その答えを聞いて、あなたは自分の愚かな行動を悔やんだ。戦争、なんてワードをあなた自身もう一生聞きたくなかったし、この目の前の相手にも嫌な思いをさせてしまっただろう。
なにも言えなくなってしまったあなた。そんな彼女を見て、優しい微笑みを浮かべた男は、あなたに言った。
それなら……と、一回くるっとまわって空を駆ける流星のように、どこか儚くすぐに消えてしまいそうな、けど美しい表情で言った。
確かに、と納得してしまったあなた。いつものあなただったら、絶対にこのような考えを持つことはないだろう。しかし、
ここ数日の疲れが溜まっていたのか、それとも先程の話のせいで感覚が麻痺してしまったのか……わからない。けど、あなたはふらふらと男についていってしまったのである。













編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。