________3日後
ジミンside
テヒョナと口論になって、互いに口を効かなくなってから1週間が経った。
テヒョナとは長い付き合いだが、ここまで話さなくなったのは初めてだった。
幼い頃、釜山から引っ越して来た僕の近所に住んでいたテヒョナ。
転校先の学校で出会い、何度か顔を合わせていたが遊ぶほどの仲では無かった。
ある日、公園で友人達とサッカーをしていたら1人滑り台に座ってクマのぬいぐるみを持ちながら コンギで遊ぶテヒョナが居た。
初めは学校でも口数の少ない子だったから、1人が好きなのかと思っていた。
でも、その日
サッカーを終えて帰ろうとしていたら、コンギを1個無くしたのか、テヒョナが半泣きの状態で公園中を探し回っていた。
細い手で砂場の砂をかき分ける様子を見ていたら、なんだか放っておけなくてコンギ探しを手伝い始めてた。
オレンジ色の空と鴉の鳴き声が公園に響いて、結局コンギはテヒョナの座っていた滑り台の下で見つかった。
それから、なんとなく遊ぶようになって。
学校を卒業して離れ離れになっても、テヒョナの隣に居続けてきた。
あれから、14年も過ぎた。
考えてみれば、14年も変わらず一緒に過ごしてれば変化の1つや2つ。
おきて当たり前なのかも知れない。
prrrrr
台所で残り物の豆腐チゲを温め直していたら、母親からの着信が入っていた。
お人好しで、誰にでも手を差し伸べてしまう僕のオンマ。
そんなオンマが、幼い頃から知ってるテヒョナのことを心配しないわけが無い。
息子同然だと昔テヒョナに言っていたぐらいだ。
重度の不安障害。
中学生の頃、一時的に休学していたテヒョンが学校へ復帰した時 僕に話してくれた。
担当医から診断されたらしく、その中でもテヒョンはパニック発作のタイプだったらしい。
度々、耳を塞いだり動悸が激しくなっていたのはそれが原因だった。
何の理由もなく、発作が起こりテヒョンは自分に襲いかかる恐怖と孤独を耐えて、発作が収まると今度はまたいつ起きるか分からない不安に悩まされていた。
そんな時、僕はネットで調べた腹式呼吸をテヒョナにすすめたり、隣で寄り添いながら背中を撫でていた。
だから、テヒョナを1人には出来なかった。
テヒョナを1人にするのは見捨てるのと同じだったからだ。
1週間、そう僕は1週間テヒョナに会っていない...
冷静になった今、思い返してみれば、些細な喧嘩にすぎない あの一件で1週間もテヒョナを1人にしてしまった。
体の血が引き、動悸が早まった。
最悪の事態が脳裏を過ぎり、胸騒ぎがする。
通話中のスマホを投げ、僕は急いで上着を羽織りテヒョナの家に向かった。
テヒョンside
1週間程近く放置した足や腕に出来た傷後は、汚れた部屋のせいか、それとも手当をしなかったせいか治りかけているところもあれば、赤く腫れ炎症を起こしつつあるところあった。
でも、傷が炎症を起こそうが、僕にはどうでも良かった。
週に3度と減りつつあったパニック発作が、今週は何度も、昼、夜関係なく起こっている。
部屋に出ることも出来ないまま、同じ場所に蹲り動けずにいた。
自分が動くことで、部屋が更に荒れるからだ。
立ったまま発作を起こせば、きっと体が言うことを聞かず、部屋中に散らばった硝子の破片を踏みつけるだろう。
明日を迎えられるか、なんて不安を感じていたのに、今では考えもしなくなっていた。
ただ、ただ解放されたいだけ。
それだけだ。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。