side : 道枝
【 すこーし過去 】
今日のレッスンは “ 3時 ” からなのにあなたがまだレッスン場に姿を見せない。
そんなに遅く来るタイプじゃないのに、どうしたんだろう……?
時はたち30分後。
あなたはまだ姿を見せないし、LINEも既読をつけない。
何か嫌なことが想像出来て、
それが嫌で、嫌で、仕方なくて
気づいたらがむしゃらにあなたと行ったところを巡っていた。
レッスン帰りに2人で行った公園
なにわ男子で楽しんだゲームセンター
京本くんと行ったと自慢していたカフェ
思い出の中にあなたはいるのに、
現実にはいない。
あと巡っていないところ…………
みんなで沢山行って、楽しんだ駅。
そこには思い出の中にも、現実にもあなたがいた。
俺は「駅にあなたいました」とグループラインに送っておいて
探し回った疲れから、流れ込むように、あなたに覆い被さるように抱きついた。
ぺろりと舌を出すあなた。
沢山迷惑かけられたはずなのに
憎しみを一切感じない俺は手遅れなのか。
あなたは大切なメンバーやから
無事でいてくれたらいいよ、なんて言わないけれど
とりあえず、また思い出を作ることが出来そうでよかった。
外の雨はもうやんでいて
空には7色の虹がかかっていた。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!