いつものように6人でぺちゃくちゃと喋りながら
会社を出た瞬間だった。
「じゃあね」なんて言って
みんなに背を向けようとした時
「あなた!!!!」
元気いっぱい、なんて声が
私を呼ぶ
振り向いた時には
いつものように私に抱きつく樹
いや、飛びつくが正解だろう
周りの人がチラチラと見る中
ほかの5人は明らかに驚いて固まっている
北斗以外は、
大我「え、だれ?」
ジェシー「え、?え?」
慎太郎「何?知ってる人?」
優吾「なになに」
そんなことを言いながら
1度別れたみんながまたこっちへ来る
その時に見えたんだろう
首にあるマークが
はっきりと。
『樹、マフラーは?』
樹「あ、忘れた」
やっと気づいたのか
自分の首を隠すように手で覆う
そんな樹の首に私のマフラーを巻いた
『なんでいるの?』
樹「昨日何されたかわかってんの?」
『心配してきてくれたの?』
樹「そう」
そんな彼の優しさについ頬が緩む
ありがとう、と返せば
いつもの笑顔が帰ってくる
うん。やっぱり嫌いじゃない。
この空間。
北斗「で、なんでいんの?」
北斗の低い声で我に返る
完全にみんなのことを忘れていた
慎太郎「北斗知ってんの?」
北斗「うん」
北斗だけが知ってて、
鶯のマークがついてて、
私の名前を知っている、
みんなもわかったんだろう
彼が私の拾った「人」だということに
じっと樹を見たまま
誰も何も言わない
怖い顔してさ、
そっと樹が私の方に寄る
その時だった
ジェシー「えー!俺めっちゃ会いたかったんだよね!」
慎太郎「俺!慎太郎!覚えた?覚えたよね?よし。」
大我「全然想像と違うわ」
優吾「あ、とりあえず、よろしく」
え、?
思ってた反応と違いすぎて
驚いた顔のまま
後ろにいる樹と目が合う
『樹、大丈夫だよ。こうゆう人達だから。』
なんだか心がポカポカして
そう言えば
すっ、と樹が私の前に出た
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。