第72話

主将の仮面(黒尾視点)
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2026/04/19 12:12 更新
「……っ、チッ」










ネット際、指先を掠めていったボールの感触に、内心で舌を打つ。











いつもなら、もっと正確に絞り込めているはずだ。









……さっきから集中しきれていないのが、自分でも分かる。











ブロックに跳ぶ瞬間も、リエーフの動きにアドバイスを飛ばしている時も。










視界の端に映る「音駒のベンチに座る彼女」の姿が、どうしようもなく頭の中に浮かんできてしまう。









(……俺は音駒の主将だ。)











自分に言い聞かせるように、強く拳を握る。







まだ、烏野との「ゴミ捨て場の決戦」だって叶っちゃいない。 

  










ここで足を止めている暇なんてない。全国へ行くために、今は目の前の試合、目の前のバレーについてだけを考えなきゃいけない。









……のに。











思考をバレーに引き戻そうとすればするほど、彼女が木葉に向けていたあの混じりけのない笑顔が、胸の奥をチリチリと焼く。









主将として、一人の選手として、こんなことで足元が疎かになるなんて、最高に格好悪い。













「……っ、さあ一本!! 粘るぞ!!」














自分自身を鼓舞するように声を張り上げ、再びコートを駆ける。







なんとか第1セットを戦い抜き、次のタイムアウト。













呼吸を整えようとベンチに戻り、タオルを手に取った。
……その時だった。











「……黒尾くん、大丈夫……?」












隣から、ひどく心配そうな声がした。






見ると、あなたちゃんが不安そうに俺の顔を覗き込んでいる。












いつもなら「余裕だよ」なんて適当に茶化して笑えるはずなのに。












「……何が?」











絞り出した声は、自分でも驚くほど低くて、少しだけ震えていた。









ずっと俺を見てきた彼女の目は、俺が必死に隠している





「主将の仮面」の下の、不恰好な動揺を簡単に見抜いてしまうらしい。











「なんか、いつもと違う気がして……。無理、してない?」











真っ直ぐに向けられるその瞳。










その優しさが、今の俺には何よりも痛くて。













……そして、どうしようもなく愛おしかった。













(……なんで、気づいちゃうかな)













心の中で、力なく苦笑する。












ずっと俺のことを見てくれていたから。




俺が誰にも見せないように押し殺している、眉間の微かな力みも、呼吸の乱れも、彼女には全部バレてしまうんだ。















他の誰でもない、彼女にだけは見抜かれてもよかった。




けれど、今それを見抜いてくれる彼女は、もう俺の隣にはいないんだろ?













(……嬉しいよ。でもさ、それ、反則だろ)













自分を心配してくれるその声に、冷え切っていた胸の奥がじんわりと熱くなる。










その一方で、この優しさはもう「俺だけのもの」じゃないんだという事実が、重くのしかかってくる。












彼女がこうして俺を気遣うのは、もう恋心からじゃない。







木葉の彼女として、そして音駒の手伝いをするマネージャーとしての、純粋な善意。













俺がかつて、当たり前のように受け取っていたはずのその視線が、今はもう別の場所へ向かっている。













「……っ」













一瞬だけ、彼女を抱き寄せて「お前のせいだよ」と全部ぶちまけてしまいたい衝動に駆られる。




でも、そんなこと、できるはずもない。













「……あーあ。参ったね、ホント」












俺はわざとらしく、いつものように意地悪く口角を上げた。





けれど、彼女を見つめる瞳から、隠しきれない熱が漏れ出すのを止められなかった。











「……気づいちゃった? さすがあなたちゃん。……でも大丈夫。俺、音駒の主将だからさ」













そう言って、彼女の頭をポン、と軽く叩く。









手のひらに伝わる髪の柔らかさが、今の俺には毒のように甘くて苦い。













「心配すんな。おジョーさん。……お前の『元・好きな人』は、これくらいじゃ折れないよ」












冗談めかして言ったその言葉が、自分自身の胸を一番深く抉った。













今更、自分がどれだけズルくて、どれだけ彼女を求めていたのかを思い知らされる。













「……さあ、行くぞ。後半戦、キッチリ決めさせてもらうわ」













振り返らずにコートへ戻る。
背中に感じる彼女の視線を振り切るように、俺は再び「主将の顔」を作って、ネットの向こうで待ち構える木葉を、今度こそ真っ向から睨み据えた。
黒尾さんの心情…書くの楽しすぎて、なかなか進めない…


というか終わりが見えない笑



こうやってずるずる書いちゃうんですよねぇ……

片想いの心情って1番書くの楽しいですからね🥺



どうやったら綺麗に終わるか考え中です、、


思いつくまで、楽しみながら書いちゃいます!


長えよ!完結したんじゃねぇのかよ!

と思いますよね?もう少し待っててください!



多分!!終わると思う!、、多分!!、、

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