第20話

🐱💛×🐱💜‪(腐)/夜に駆ける
195
2024/06/12 10:44 更新
夜に駆けるの元になった小説「タナトスの誘惑」「夜に溶ける」の内容を含みます、というかほぼそれです。読んでなくて、ネタバレが嫌な人はブラウザバック推奨

※死ネタ











【タナトスの誘惑】








ツナカン
はぁ、はぁ…っ……!!





マンションの階段を駆け上がる俺の体からは
汗が止めどなく噴き出していた。











……だけだった。
るかわくんから来た一通のLINE。





その四文字が何を意味しているのか
ツナカン
( 俺にはすぐにわかった… )




LINEが来た時、職場で仕事をしていた俺は
帰り支度をしたあと急いで自宅のあるマンションに向かった。





るかわ
……




マンションの屋上、フェンスの外側に彼は居た。


日が沈み出した空と、るかわくんの姿が
フェンス越しに重なっていた。





ツナカン
( これでもう、四回目か… )





飛び降り自殺を図ろうとする彼の姿を見たのは、実はこれで四回目だ。










世の中には二種類の人間がいるという。



ツナカン
( 生に対する欲動、「エロス」に支配される人間と… )
ツナカン
( 死に対する欲動、「タナトス」に支配される人間… )






この世界の人間のほとんどが前者だが、るかわくんは紛れもなく後者だった。







るかわくんは、最近このマンションに引っ越してきた。



今回のように、飛び降り自殺をしようとしていたところを、俺が止めたのが出会いだった。



所謂一目惚れというのだろうか、どこか儚げな表情をしている彼は、一瞬で俺の心を奪った。




ツナカン
( るかわくんと付き合い始めて結構経ったな… )




それだけの期間付き合っていても、俺はひとつるかわくんに疑問に思うことがあった。



るかわくんは、自殺をしようとするとき、必ず俺に連絡を入れる。そして、俺が来るまでその場で待っている。







ツナカン
( 誰にも知らせずひとりで死んだ方が確実なのになぁ )





ツナカン
( 出会ったときみたいに俺に自殺を止めて欲しいってこと? )





ツナカン
( 可愛いところあるじゃない )




だから俺は、今夜もこうやってマンションの階段を駆け上がる。



ツナカン
はぁ、はぁっ……!!
フェンスの向こうに立つ、るかわくんの背中を見つけた。
ツナカン
待ってるかわくん……!!
フェンスを乗り越え、彼の手を取る
ツナカン
( 冷た… )


るかわ
……
るかわ
ツナカンくん、離して




儚くて静かな声
俺はるかわくんの声も好きだった。





ツナカン
……っ、なんでそうやって、
ツナカン
るかわくんは……!
るかわ
はやく、死にたいから



ツナカン
どうして……!
るかわ
死神さんが、呼んでるから





るかわくんには「死神」が見える。
図書館やネットで調べると、「タナトス」に支配される人間に稀に見られる症状なのだということがわかった。
そして、「死神」は「タナトス」に支配されている人間にしか見ることができない。



ツナカン
…死神なんていないよ



るかわ
なんでわかってくれないの……!




俺が死神を否定すると、るかわくんは決まって苦しそうな表情でそう答える。




前に一度、るかわくんに死神について尋ねたことがある。
ツナカン
その、死神ってどんな形してるの?
ツナカン
黒い服着て、フードかぶって、鎌持ってる?
るかわ
ううん、
るかわ
死神は人間の姿だよ
るかわ
死神はね、見る人が一番魅力的だって思う姿に見えるんだよ
ツナカン
へー…




俺は、


死神虚空を見つめるるかわくんの顔が嫌いだった。
見とれているかのような、恋するような
そんな表情が、
嫌いだ。
るかわ
……っ
るかわくんが俺の手を振り払おうとしたから、思わず力強く握ってしまった。



るかわ
痛い……!


ツナカン
!  ごめん……





ツナカン
( でも、るかわくんが悪いんじゃないか。 )
ツナカン
( 俺の手を振り払おうとするから。 )
ツナカン
( 俺のことを見てくれないから。 )




るかわ
死神さんはこんなことしないよ……


























ツナカン
なんで……



なんで、こんなにも俺はるかわくんのことを愛しているのに
君は俺だけを見てくれないんだろう







死神に嫉妬するなんて、馬鹿げていると心のどこかでは思っていたが、もうそんなことはどうでもよかった。







るかわ
もう嫌だ…




ツナカン
( 俺も嫌だよ… )




るかわ
もう疲れたよ…




ツナカン
( 俺も疲れたよ… )















るかわ
…早く死にたい
ツナカン
俺も死にたいよ…!!





その時、るかわくんが顔を上げた。














にっこりと笑っていた。














ツナカン
( あれ、これってもしかして… )















るかわ
やっと…気づいてくれた?





ツナカン
やっと分かったよ、るかわくん…







るかわ
ほんと……?よかったぁ







ああ、そうか。
ツナカン
( るかわくんが自殺を図ろうとする度に俺を呼んだのは、俺に助けてもらいたかったからじゃない。 )
ツナカン
( るかわくんは、俺を連れて行きたかったんだ。 )





俺にとっての「死神さん」は、るかわくんだった。






るかわ
じゃあ、行こうか






ツナカン
…うん、行こう








手を繋いだ君と俺は、



夜空に向かって今、駆け出した。









「夜に溶ける」





どこまでも広がる夜空の下、



隣には、眠るように目を瞑ったツナカンくんがいる。






るかわ
( これでもう、俺の役目は終わり。 )




俺は、「死にたい」というツナカンくんの思いから生まれてきた、ツナカンくんの目にしか映らない幻想に過ぎない。






るかわ
ツナカンくんを殺すこと、それが俺の役目だった…




ツナカンくんは外から帰ってくる時、いつも疲れた顔をしていた。
でも俺と一緒にいる時は、たまに嬉しそうな顔を見せてくれた。
るかわ
( 俺は散々ツナカンくんを苦しめていたというのに、 )
るかわ
( どうしてそんな顔を見せてくれていたのか、今でも不思議でしょうがないけれど… )


俺は、ツナカンくんのその表情が大好きだった。
るかわ
もうそんな顔も見られないのかと思うと、ちょっと寂しいな…





るかわ
( 皮肉だよね、ツナカンくんから表情を奪ったのはこの俺なのに )






でも、許してほしい。

ツナカンくんが「死にたい」と思ってくれなければ、俺は生まれなかった。






俺がツナカンくんの救いになれていたらいいなと思う。





るかわ
俺と出会ってくれてありがとう…





感謝を込めて、彼の唇にキスをする。




やはりツナカンくんは目を瞑ったまま、動かない。





るかわ
生まれ変わるなら花か蝶に生まれ変わりたい…
るかわ
でも、やっぱり人間に生まれ変わるのも捨てがたいなぁ





人間でいることは苦しいのかもしれないけれど、ツナカンくんと一緒なら大丈夫なのかもしれない。





るかわ
そしたらいつか、ツナカンくんが心から幸せそうに笑う姿を見てみたいな





るかわ
( もちろん、俺の隣で。 )







沈むように溶けていくように、
二人だけの空が広がる夜に。

二人一緒なら大丈夫。
あの遠い夜空へと、どこまでも駆けて行ける。
この手を離さなければ、きっと。





「 繋いだ手を離さないでよ 」




繋いだ手の感触はそのままに、



この世界の焦燥から解放された俺たちは、



どこまでも続く夜へと溶け込んでいった。














夜に駆ける/YOASOBI

星野舞夜「タナトスの誘惑/夜に溶ける」












文字書きすぎちゃっ

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