第12話

白衣と眼鏡と保健室
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2018/09/27 05:52
例年より早く梅雨が明け、
7月に入るとより夏らしい気候の日が増え、
蝉の声も一層増す。

見頃を過ぎた紫陽花は、
色を失いかけ
暑さに疲れているように見えた。


すっかりテストモードになった教室で、
私はこの学年に入って
最初の期末テストに向け、
初めて化学に少しだけ自信を持っていた。



放課後、化学準備室で
二宮先生に教わっているだけではなく、
テストを作成するのが

二宮先生だからっていうのもある。

意地悪な問題も多いだろうけど、
その問題にきっと少しは
慣れているんだろうな
と感じることが増えた。


鈍いノックの音を鳴らすと、
二宮先生がすぐに顔を出して、
二宮和也
悪い。テスト期間中は生徒は入れないよ
と昼休みのいつもの時間を断られた。



でも
すぐに私の手元に
既に焼きそばパンとコーヒー牛乳が
用意されているのを見て、

眼鏡の奥を緩ませると
二宮和也
今日は保健室
後で行くから
と、きっと以前なら冷たいと感じていた、
でも今は

温かく優しいと感じる声で誘う
自分
失礼します

ノックをしても返事のない保健室に
静かに入ると、中には誰もいなくて、
このあと二宮先生が来る
と考えただけで


緊張する。


2人きり………



保健室で男女が2人きりって
それはもうやばくない?

しかもそれか二宮先生……。

と、一瞬の妄想ののちに
あの人は理性が飛ぶことはないだろうな、
と寂しいような安心したような、

そんな気持ちでいた。



ガラガラっと扉が開くと同時に
自分
っっ!わ、びっくりしたー

と騒がしく入ってきたのは、
体育の相葉先生で。
自分
あ、ごめんなさい。ビックリさせて
相葉雅紀
ううん、こっちこそうるさくしてごめんね。体調悪いの?大丈夫?松潤いないの?
相葉先生は眩しすぎるくらい
キラッキラの笑顔と
少し体調を心配する表情と、

コロコロ顔を変えながらペラペラと話す。
自分
あ、いえ、私は
と一歩離れると、
松本先生を松潤と呼ぶほどの距離の相葉先生に、測って!と体温計を渡される。
自分
いや体調悪くな
二宮和也
こいつ俺が呼んだの。
相葉先生こいつに用っすか?
前言撤回。

冷たい無愛想としか思えない口調で
保健室の入り口に立つ。
相葉雅紀
あ、ニノが
二宮先生て友達いないように見えるし、
生徒もそんなようなことを言うけど、
案外周りの人に好まれて
可愛がられて過ごしてるんだと思う。


2人の笑い声を聞きながら
そんなふうに思ってたら、
松本潤
保健室は静かにね〜〜!みんな何の用?涼みに来ただけなら帰ってくださいね〜〜!

って松本先生が戻ってきて、
数分前に2人きり、
と緊張していた雰囲気にはならず

気づいたら緊張が解けていた。



結局4人でお昼ご飯を食べて、
二宮先生が他の先生の前で
どんな感じなのかなって少し知れて
嬉しさを感じると同時に、


私の知ってる二宮先生は
ほんの一部なんだ

って痛感させられた。



放課後も保健室に場所変更して、
放課後講習を行なってもらうことになって、
保健室で待っていたけど、
二宮先生は全然来なくて、松本先生と2人、


涼しい部屋でぼーっとしていた。
松本潤
二宮先生がすきなんでしょ
二宮先生の時とは違う
少し気まずさのある沈黙を破ったのは
衝撃の言葉で、
自分
いや、そんなことな、
そんなことないですって言おうとしたのに
松本潤
嘘は良くない。顔に書いてある
と綺麗な顔を私の前に出して、
自分の頬をツンツンとつついてみせる
松本潤
正直教師と生徒の恋愛は良くないけど、人間同士だもん、好きになってしまったら職業なんて壁、関係ないでしょ?
窓の方へ歩きながら
大人の余裕とも言えるような
経験の深さとも捉えられるような
言葉を私にくれる
松本潤
二宮先生はね、けじめがしっかりしてる人。頭がいいから行動を起こすまえにしっかり考えられるし、してはいけないこともわかってるはず。もしかしたら、小田さんの気持ちにも気づいているかもしれないね。きっと、彼もあなたさんのこと、普通の生徒とは思ってないんじゃない?
松本先生の言葉は、
いやいや〜〜
と流せる雰囲気ではなく、
しっかり受け止めなければと思ったし、
なぜか少し説得力もあった
自分
……って!私が二宮先生のこと好きって認めたわけじゃないですから!

急に我に返ると松本先生は
ハハハっうっかり口滑らなかったか〜〜
と笑いながら

養護教諭になら話しても誰にも怒られないよ、
とこそっと耳打ちして来た。


えっ
と驚く間もなく静かにドアが開いて
と言う言葉と一緒に
二宮先生が入ってきた

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