大我Side
北「もう俺に誤魔化しは利かないからな」
オレは渋々白状する。
大『……無理矢理にキスされた』
その言葉に、北斗は愕然とする。
北「…………っ、あいつ、俺の大我に……」
北斗は、怒りに握り締めいた拳をふるふると打ち震わせていた。
北「許さねぇ……あいつ、一発殴らないと気が済まない」
今にも山科先輩の所に怒鳴り込みに行きそうな北斗を、オレは慌てて引き止めた。
大『ま、待って。北斗!』
北「離せっ、大我」
大『駄目だっ!』
オレは北斗にぎゅっと抱きついてきて、小柄な体を使って必死に引き止める。
小柄なオレが大柄な北斗を引き止めるのは大変なことだが、自分のせいで北斗に暴力沙汰を起こさせる訳にいかない。
大『北斗がオレのために怒ってくれるのは嬉しいけど、暴力だけは振るってほしくない』
北「大我……」
大『お願い、北斗』
北「分かったよ大我。お前を悲しませるような事をしたくないからな」
大『ありがとう北斗。分かってくれて』
オレがほっと胸を撫で下ろすと、北斗の手が顎に触れてそれを持ち上げられ、北斗の目がすっと細められる。
吸い込まれるように、北斗の目を見つめてしまう。
大『……北斗、どうした……の……』
北斗がわざとらしく溜め息をつく。
北「大我は隙だらけだから、つけ込まれるんだよ」
大『隙だらけだったから山科先輩にキスされた訳じゃ……』
山科先輩にキスをすれば、オレの事を諦めてくれるって言うから。
そんなこと北斗には絶対に言えない。
言ったら、北斗は山科先輩に報復するだろう。
大『……まぁ、ちょっとは隙があったかもしれない……』
北「ちょっとは?」
大『もういいだろ。終わったことなんだからっ!』
顎にかかった北斗の手を振り払ったが、その手をがっと掴まれた。
北「よくない」
大『よくないって………ン、ぅん………っ』
北斗にぐいっと抱き寄せられ、唇を塞がれてしまう。
オレの戸惑いをよそに、北斗は唇の内側を舐め、歯列をなぞる。
吸い上げられるように激しく口腔を蹂躙され、ぞくりとしたものが背中を駆け上がってくる。
大『ふ………あっ………』
息苦しくなって喘ぐが、北斗の唇は逃れることを許さなかった。
吐息を吐く度にまるでそれを吸い取るかのように、執拗なキスが続く。
大『っ………んで?』
それでも北斗の唇が離れた一瞬の隙を縫って、オレは疑問を口にせずにはいられない。
北「消毒。あいつの感触を忘れさせてやる」
そう言って、北斗はもう一度キスをしてくる。
深くキスされ、甘噛され、唇が痺れるようになっていた。
北斗は舌でオレの口腔内を弄って、それから引き抜いた。
ちゅく、と唾液の音が漏れる。
最後に唇を吸い上げると、北斗は苦笑した。
北「まだし足りないが、邪魔が入ったから消毒はここまでだな」
廊下から賑やかな声と複数の足音が聞こえてくる。
北「あいつら何しに戻って来たんだか」
複数の足音が止まり、教室の開かれたドアから髙地が顔を覗かせた。
その髙地の後ろにはジェシーの姿もある。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!