大我Side
大『樹と髙地は分からないけど、北斗は付き合ってる子がいるってのは聞いてるよ』
付き合ってる子ってのはオレのことなんだけど、そんなこと女子たちの前で言えるはずなどない。
ただ、樹と髙地に付き合ってる子がいるってのが少し気になる。
二人とは恋愛の話なんてしないから、そこん所どうなんだろか。
女子1「大我くんが言うんなら間違いないよ」
女子2「ショック……」
女子たちがガックリと肩を落とす。
そんな女子たちを尻目に、オレは樹と髙地の席へと向かう。
大『ねぇ樹、髙地』
樹「どうしたの?きょも」
髙「どうした?」
オレの声に、話をしていた二人が同時に振り返る。
大『北斗を探してるんだけど知らない?』
樹「北斗ならゴミ捨てに行ったよ」
髙「そういや、ゴミ捨てに行ったきり戻って来ないな」
樹「女子たちに捕まってんじゃねぇの」
大『なら二人でいいや。今からちょっと付き合ってくんない』
樹「きょもごめん、今から部活なんだよ」
髙「オレは生徒会があるから、ごめんな」
大『じゃあ仕方ない。北斗が戻って来るのを待ってみるよ』
樹「ごめんな、きょも」
髙「じゃあまた明日な」
樹と髙地は自分の鞄を掴むと、足早に教室を出て行ってしまった。
しばらくの間、北斗が戻って来るのを待っていたが、北斗は一向に戻って来ない。
山科先輩に告白されて、今日で一週間。
今日、山科先輩に告白の返事をしなければならなかった。
一人で山科先輩のもとへと行くのは心許ないから、樹と髙地について来てもらおうと思ったが、予定があるなら仕方ない。
肝心な北斗は戻って来ないし……
こうなったら一人で行くしかないと高を括り、オレは一人教室を出た。
オレが教室を出たと同時に北斗が教室に戻って来る
戻って来きた北斗に気づかないまま、オレは三年の教室へ向かった。
上級生たちの好奇に満ちた視線がオレに集中する。
大(三年生の階って、なんか怖いし緊張するな……)
開いている戸口からオレはそっと教室内へ顔を覗かせた。
放課後で少ないとはいえ、数人の生徒が残っていた。
その中に、窓際で友人と談笑している山科先輩の姿もあった。
どう声を掛けようかと思案していると、顔見知りのバスケ部の先輩がオレに気づいてくれて声を掛けてくれた。
先輩「あれ?大我くん、こんな所でどうしたの?」
大『あの、山科先輩に用事があって』
先輩「大輝に?ちょっと待っててね。お〜い!大輝、一年の可愛い子ちゃんからの呼び出しだぞ!」
山科先輩が「なになに」と言いながら、こちらへ駆け寄ってきた。
山科「大我くんの方から俺に会いに来てくれるなんて嬉しいな。で、俺になんか用?」
大『あの、この前の告白の返事を……』
山科「ここじゃなんだから、屋上に行かない?」
大『はい』
山科先輩はオレの肩を軽く抱くようにして、室外へと促した。
オレの腕を引き、山科先輩が階段を上がっていく。
屋上のドアを開けるとその瞬間、冷たい風が吹き抜けた。
大『寒っ』
吹き抜けた冷たい風に、オレは身を縮めた。
山科先輩がフェンスまで歩み寄ると、オレの方へくるりと振り返る。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。