第2話

813
2024/06/28 18:14
















 
彼と出会った翌日の休み時間、俺は仲のいい友達に彼の話をしていた。




 
ジ ェ シ ー
ジ ェ シ ー
  旧校舎にさぁ、音楽室あったじゃん?  
ジ ェ シ ー
ジ ェ シ ー
  昨日あそこ通ったら、ピアノ弾いてる  
すごい綺麗な男の子と会ったんだよね
樹
  同学年?  
ジ ェ シ ー
ジ ェ シ ー
  上靴白だったし、3年?って  
聞いたら頷いてたよ
樹
  喋りかけたの?  
ジ ェ シ ー
ジ ェ シ ー
  もちろん!  
樹
  相変わらずフレンドリーだな〜  
樹
  相手の名前は?聞いた?  
ジ ェ シ ー
ジ ェ シ ー
  俺それ聞こう思ったんだけどさぁ!!  
樹
  うおっ、声デカ  
ジ ェ シ ー
ジ ェ シ ー
  途中で先生に頼み事されたの  
思い出して俺の名前だけ言ったの
樹
  つまり相手だけがジェシーの  
名前知ってて、ジェシーはその子の
名前知らないの?
ジ ェ シ ー
ジ ェ シ ー
  そうなんだよ!  
樹
  なにやってんの 笑  
ジ ェ シ ー
ジ ェ シ ー
  焦って聞くの忘れちゃったよ  
樹
  んー、同学年できょも以外に  
歌とピアノ上手いやついたかな…
樹
  ……あ、 





心当たりのある人が思い浮かんだのか「あ、」と顔を上げる樹。




しかし、「いや、そんなんわけないか」とまた顔を下げた。





 
ジ ェ シ ー
ジ ェ シ ー
  いつもそこで弾いてるって  
言ってたけど、、今日も居るかな
樹
  ぜってー行くべきだろ!  
ジ ェ シ ー
ジ ェ シ ー
  えーでも…先生があんま行くなって  
樹
  いいじゃん、行ってもバレねえって  
ジ ェ シ ー
ジ ェ シ ー
  バレるよ!
見つかって怒られたらヤダもん





怒られるのが嫌で断り続けていると、樹が何か閃いたかのように片方の口角を上げた。




 
樹
  俺が行ってやるよ  
ジ ェ シ ー
ジ ェ シ ー
  え、樹が?  
樹
  そう、お前が行かないなら  
俺が代わりに行く。これよくない?





「な?な!?」と圧をかけられ、渋々納得した俺。





でも段々と不安になってきて樹に注意しようとしたら、授業の始まりを知らせるチャイムが鳴ってしまった。




 
ジ ェ シ ー
ジ ェ シ ー
  ………  





大丈夫、樹なら大丈夫。





お得意の懐の入り方でなんとかなる。





ブツブツと小さい声でそう言い、ひとつも頭に入らない授業を真剣に受けた。







 




 樹side





 
 「もう終わりだね」


 「君が小さく見える」


 「僕は思わず君を抱きしめたくなる」


 「『私は泣かないからこのままひとりにして』」


 「君のほほを涙が流れては落ちる」





___





休み時間、音楽室の前に行くと聴こえた歌声。





ジェシーの言っていた通り、虚しくて悲しくて綺麗な歌声だった。





ずっと聴いていたくなり、音楽室の前で立ち竦む。





___





 「『僕らは自由だね』」


 「いつかそう話したね」


 「まるで今日のことなんて思いもしないで」


 「さよなら、さよなら、さよなら」


 「もうすぐ外は白い冬」


 「愛したのはたしかに君だけ」


 「そのままの君だけ」





___





窓から見える例の彼の全てを目にし、今迄の記憶が全て蘇る。





俺はドアを開けて、目の先にいる彼に話しかけた。




 
樹
  …北斗  
北 斗
北 斗
  ぇ、なんで、じゅり……、 
 
樹
  ………久しぶり  






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