あの日、晃牙から投げつけられた言葉は、あなたの下の名前の胸に消えない棘として刺さっていた
窓の外、夜明けの群青色が少しずつ空を侵食していく
あなたの下の名前は資料室のデスクで、一通の書類を見つめていた
それは、担当交代の申し出だった
彼を愛しているからこそ、彼が『魔王』として君臨し続けるステージを汚したくない
その夜、最後の仕事のつもりで向かったレッスン室
零はいつものように鏡の前で舞っていたが
あなたの下の名前の気配を感じると、すぐに動きを止めて振り返った
心配そうに歩み寄る零
その手があなたの下の名前に触れようとする
あなたの下の名前は、生まれて始めてその手を――――
零の温もりを、自ら拒むように一歩後ろへ下がった













編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!