第3話

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2024/06/11 21:00 更新
俺達の主が住む冬麗殿まで、軽口を叩きながら並んで歩く。

過去を思い出してどうしようもなく寂しそうな顔をしたあなたをいつものようにからかうと、普段の元気な彼女に戻ってほっとした。

俺の左隣で、表情をころころと変えるあなた。
その様子は昔からちっとも変わらない。


あの日、俺が8歳の時、黒く汚れて表情の無い女の子を父さんが連れ帰ってきた。
一目見て、たまに屋敷に来るあの子だって分かった。

その頃の俺は遊び相手もいなくて、ただ先生と一対一で学問と鍛錬を繰り返す日々を送っていた。それが嫌いではなかったけど、子供にとって退屈であることは間違いない。

たまに見るその子はいつも元気に笑っていて。幸せそうなその様子を見ると俺まで元気になれた。見る度に、そのかわいらしさにときめいた。

そんな子が所々破れたり焦げたりした服を着て、黒く薄汚れた顔に、茫然自失といった表情を浮かべて父さんに支えられている。

驚いて何があったのかと思うと同時に、その悲愴な美しさに心惹かれた。
いつも明るい君をそんなにさせるのは、何?知りたい、教えてほしい。

見つめすぎたのか、あなたはしばらく俺を警戒していたらしい。

両親を失って元気がまるで無かった彼女も時間が経てば元の性格を取り戻し、俺と一緒に鍛錬したり、勉強したり、遊んだりするようになった。俺の隣にはいつも、あなたがいる。

幼なじみで、彼女がキム家に籍を入れてしまったから今や姉でもある(俺の方が3ヶ月誕生日が遅い)けど。

俺はずっと、あなたのことが好きだ。

きっと、あなたは俺の気持ちに気付いていないし、俺のことを気にかけてもいない。たぶん、恋愛自体する気がない。彼女の夢は、キム家に報いることだから。

義理の兄弟で血は繋がっていないから、恋をするのに制約は無い。
いつか、この気持ちを伝えられたらいいけど、それは今じゃない。…あなたが、夢を叶えるまで。それまでは俺が隣で、あなたを守ると決めている。
あなた
ナムジュン?聞いてる?
あなたが俺の顔を覗き込み見詰める。ずっと一緒にいるのに飽きもせずドキッとする。
ナムジュン
(かわいい)
ナムジュン
ん、聞いてるよ
話しながら歩き続けて、大きな門が見えてきた。門番に声をかけて中に入り、煌びやかな御殿の中の一室に入る前に声をかける。
ナムジュン
ソクジン様、ナムジュンとあなたです
戸を引いて中に入ると、座って机に向かっていた俺達の主がゆっくりと顔を上げる。
ソクジン
おはよう、二人とも

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