ガタ、ガタ……と
等間隔で揺れる馬車に、
すぐに体が慣れてしまったせいだろうか?
その振動が止まった瞬間、
何も無い状態に違和感を覚えてしまって
眠りの狭間を揺蕩っていた俺の意識が覚醒する。
さあっと開けていく、光に慣れない視界は
すでに白尾国の豪勢な裏門を映していた
そう言って、馬車で送迎を纏めてしてくださった
白尾国の方に慌ただしく頭を下げると
大丈夫ですよ、これが仕事ですので
と優しく微笑んでくれる。
ホント、この執事さんには
毎度お世話になってしまっているよ…
裏門からかなり近い裏庭に足を踏み入れれば、
丁寧に手入れされた花畑の中央にある
白を基調とした円状のガゼボの中
紅茶のカップ片手に座っているナカムくんがいた。
綺麗な横顔は、すぐに満面の笑みに変わり
屋根のせいで影が落ちても尚
それを感じさせないほど輝いている
満更でもなさそうに、ニコニコと笑っている
口元だけですら笑顔が伝わりきる表情は、
少しあなたの名前、カタカナ推奨を彷彿とさせた。
ナカムくんは人一倍甘いものが好きなので、
会う時はいつもお茶菓子交換会をしている。
今日はうちの城下町で大人気の
いちばん高級なマカロンを持ってきたから
喜んでくれるといいなぁ…
……なんて、ちょっとワクワクしながら考えた。
持ってきたマカロンを見るなり、
見た事もないほど目を輝かせて
まるでサンタからのプレゼントを開けた瞬間の
小さな子供のように喜んでいる。
前から頼んでおいた、最高級のマカロン!
と言うだけあって
味はもちろんのこと、見た目の美しさも申し分なく
後付けで足したのかと思うほど綺麗に出ている
美しいピエや、
割れる気配もない頑丈な 水色のマカロンコック。
そこにナカムくんのお気に入りの
パンダの絵が描かれており、
チョコレートで描かれたとは思えないほど
精巧で美しいものだった
その可愛らしいマカロンが夢のように
沢山あるのだから、誰だって喜ぶだろう
このお店のマカロンは本当に美味しいから
喜んでもらえたのが自分事のように嬉しくなる。
かなり広い部屋の、中央の少し奥の方。
ホワイトのテーブルクロスがかけられた
高級感のあるバンケットテーブルの上
ティーセットと共にクローシュが置かれている。
蓋を開けば、またたく間に舞い込んでくる
爽やかで甘いオレンジの香り
見るからに美味しそうなクレープ生地は
オレンジの華やかな香りとともに
自分の中の食欲を抑えさせまいと誘い込んでくる。
最高のレシピに大切な人の名前を入れるなんて
ロマンチックで素敵だな…と、うっとりしてしまう。
俺もあなたの名前、カタカナ推奨って名前を入れた料理、
作ってみたり…?
…と煩悩を浮かべたところで
この話題はやめた
さすがにシスコンが分かりやすすぎるし、
そもそもあなたの名前、カタカナ推奨は正体隠さないとだし。
ナカムくんと話すのは楽しいし、
今日は素敵な一日になりそうだ。













編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!