その写真に写っていた兄は、あなたの一人称の
記憶に居る兄とは別人のようだった。
ガサガサ……
太宰さんは、積み重なった資料の山を漁り始めた。
スッ
取り出した一つのファイルを差し出されたので、
覗き込んでみると……
〝__とは。〟
あなたの目の前に建つ屋敷は、大富豪の家の
ように巨大で荘厳だった。
ノックしてみるか。
コンコン
ガチャ
扉が開き、出て来たのは__
慥かに、あなたの一人称の知る響希と同じ容姿をした
人物だった。
危ない、動揺しては駄目だ。
太宰さんが云っていた。
響希の家に向かおうとした時、こう云われた。
……と。
太宰さんがそこまで云う程の観察眼の持ち主なら、
あなたの一人称の動揺や思惑くらい判るだろう。
ピタッ
あなたの一人称が去ろうとすると、声を掛けられた。
精一杯のつくり笑顔で動揺を隠す。
太宰さんに連絡?
いや、あの人は忙しい。
だから一緒に来られなかった。
中也さんに扶けを求める?
いや、それくらいで手を煩わせる訳にはいかない。
誰を呼べば……
響希の口から出てきたのは、予想していない
言葉だった。
大嘘だ。
だって、あなたの一人称がその兄妹本人なのだから。
あなたの一人称が背を向け、帰ろうとしたら__
ガンッ
鈍い音が響いた。
あなたの一人称は、ギリギリで防御していた。
バッ
ドンッ
してやられた。
此の儘だと拙い……
携帯電話を開き、意識が途切れる直前。
表示された名前は……











編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!