第42話

番外編:過去編 伍
133
2025/07/02 05:25 更新
あなた
……これが、あなたの一人称の兄?
太宰治
うん。君の兄だ
その写真に写っていた兄は、あなたの一人称の
記憶に居る兄とは別人のようだった。
あなた
……全然似てないですね
太宰治
君と?
あなた
はい
太宰治
慥かに……
太宰治
異能力かな?
あなた
いえ。兄の異能はそう云ったモノではありません
あなた
『何かを蓄積させる異能』です
太宰治
その何かが気になるんだけど
あなた
忘れましたよ
太宰治
あなたちゃんの兄なら、マスク
だったりして
あなた
マスク蓄積させて如何するのですか!
太宰治
さぁ〜?
あなた
……
あなた
で、兄は今何処に?
太宰治
え〜っとねぇ……
ガサガサ……

太宰さんは、積み重なった資料の山を漁り始めた。
太宰治
あ、あったあった
スッ

取り出した一つのファイルを差し出されたので、
覗き込んでみると……
あなた
……わ〜、慥かに敵ですね
太宰治
だろう?
あなた
真逆……
〝__とは。〟
太宰治
で、如何する?
あなた
勿論行動しますよ
太宰治
マフィアの敵の為に?
あなた
いえ
あなた
あなたの一人称の〝兄〟の為です
太宰治
……そう
太宰治
行ってらっしゃい
あなた
……はい、行ってきます
あなた
でっか……
あなたの目の前に建つ屋敷は、大富豪の家の
ように巨大で荘厳だった。
あなた
此処にあなたの一人称の兄が住んでる……?
あなた
……
ノックしてみるか。
コンコン
??
は〜い
ガチャ
扉が開き、出て来たのは__
響希
……?
慥かに、あなたの一人称の知る響希と同じ容姿をした
人物だった。
あなた
……
響希
……
響希
どちら様ですか?
あなた
……あ、いえ
あなた
建物を間違えたようで……
響希
……そうですか
危ない、動揺しては駄目だ。
太宰さんが云っていた。
太宰治
あなたちゃ〜ん
あなた
はい?
響希の家に向かおうとした時、こう云われた。
太宰治
君の兄は、感が鋭いらしいよ
太宰治
だからあまり表情に出さないでね
あなた
……了解しました
……と。
太宰さんがそこまで云う程の観察眼の持ち主なら、
あなたの一人称の動揺や思惑くらい判るだろう。
あなた
(だから、ポーカーフェイスになる)
あなた
では、失礼致しますね
あなた
間違えて申し訳ありませんでした
響希
ねえ君
ピタッ

あなたの一人称が去ろうとすると、声を掛けられた。
あなた
……何でしょうか?
精一杯のつくり笑顔で動揺を隠す。
あなた
(バレた、バレた。如何しよう……)
太宰さんに連絡?
いや、あの人は忙しい。
だから一緒に来られなかった。

中也さんに扶けを求める?
いや、それくらいで手を煩わせる訳にはいかない。
あなた
(姐さん?森さん?
樋口ちゃん?芥川君?)
誰を呼べば……
響希
……
響希
僕の兄妹きょうだいを知らない?
響希の口から出てきたのは、予想していない
言葉だった。
響希
君にとても似ているんだ
あなた
……知りませんが
大嘘だ。
だって、あなたの一人称がその兄妹本人なのだから。
響希
数年前に行方不明になってね
響希
それ以来必死で探しているんだ
あなた
大変ですね……
響希
丁度、僕と同じ位の背丈なんだ
響希
見たら教えて
あなた
判りました。では……
あなた
妹さん、見つかると良いですね
響希
うん
あなたの一人称が背を向け、帰ろうとしたら__
ガンッ
鈍い音が響いた。
あなた
……!?
響希
へぇ、驚いた
響希
反応出来るんだ
あなたの一人称は、ギリギリで防御していた。
バッ
あなた
(一旦距離を取って……)
響希
遅いね
ドンッ
あなた
……ッ!?
響希
『速度を操る異能』なのに遅いね
響希
まぁ、タフさだけは流石
響希
僕の妹、って感じだけど
あなた
……何故、判った
響希
教えても教えなくても良いんだけど…
あなた
……
響希
……先刻、僕が兄妹としか云って
いないのに君は妹と云った
響希
大体、僕に家族が居る事自体が
響希
いや、それを知っている事自体が
響希
僕の妹にしか判らないからね
あなた
……
してやられた。
此の儘だと拙い……
あなた
(せめて誰かに連絡を……)
携帯電話を開き、意識が途切れる直前。
表示された名前は……
あなた
……!
あなた
……貴方はホントに何時も
あなた
(あなたの一人称の一番上に居る)
あなた
……そうですよね
あなた
〝太宰さん〟

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