”
今日は解剖が建て込まなかったので午前中に1件終わらせてからゆっくりとお昼を食べることが出来そう
いつもならテラス席にミコトと夕子と久部くん、たまに坂本さんを引連れて行くのだが
今日は行く気にならない
ミコト達に断りを入れてから所長室でカップラーメンを啜っている中堂さんの元へ向かった
『カップラーメンだけじゃ身体に悪いですよ』
中堂「母親みたいなことを言うなクソが」
『心配で!言ってあげてるのに!!』
中堂「三澄達ならもう出たぞ」
『あぁ、いや今日はこっちで食べます。分析結果もまとめないといけないし』
中堂「だからってこっちに来るな馬鹿が。あっち空いてんだろ」
『嫌ですよーぼっち飯したくないですもん』
中堂「チッ」
『はいズレたズレた〜』
中堂「おい押すな!零れるだろ!!!」
中堂さんってツンデレなんだよね
つんつんつんつんつんつんつんつんでれ
くらいの割合のツンデレさん
中堂さんとは私が大学院の時との付き合いになる
中堂さんの婚約者さんと私はあるきっかけで仲が良くなって、その流れで中堂さんに会ってーって感じ
なんだかんだ文句を言いながら面倒を見てくれるこの人は口はめちゃくちゃ悪いし態度も悪いけど良い人なのだ
『中堂さん』
中堂「あ」
『もしもの話として聞いてください。友達の話なんですけど』
中堂「…」
『同じ職場の後輩に告白されたらしいんですよ。今までそういう対象として見てなかったけど、急に意識し始めちゃったみたいで』
中堂「ふっ、随分と具体的な悩みだなぁ?そのお友達は」
『まっまぁ聞いてください!
んでこう、どうしたらいいのかなって』
中堂「あぁ?なんで俺が考えないといけねぇんだよ」
『相談した私が馬鹿だったぁ』
中堂「おい。
………あー、なんだ、、好きなのか?久部のこと」
『だっ!?あっ!?ちょ、違う!違います!』
中堂「なんだ違うのか」
『私じゃない!違う!友達の話として!!』
中堂「お前顔あっかいぞ」
『ぬぁぁ、中堂さんの馬鹿野郎!』←
中堂「いって!!クッソ!お前俺が聞いてやってんのになんだその態度!」
中堂さんの肩をグーパンしてから急いでおにぎりを詰め込んだ
なんでこの人こういう時だけ楽しそうにしてんの!
クソっ!て言いながらニヤニヤしてるこの人は完全に楽しんでる
久部「…中堂さーん、神倉さんが呼んでましたよ、、!?」
『うわっ!?』
急に所長室のドアが開いたと思ったら顔をひょっこり覗かせた久部くん
私が中にいると思ってなかったのか一瞬すごく目を見開いて、メガネを掛け直した
会話、聞こえてないよね!?大丈夫だよね、?
隣の人の顔を見れば手の甲を口元に当ててニヤニヤしてる
この人ほんとに、態度が悪い!
中堂「なんだ。何焦ってんだ」
『中堂さん!顔がウザイです!!』
中堂「はぁ?お前に言われたくない」
『早く!神倉さんが呼んでるって!』
中堂「ったくめんどくせーな」
のそのそと重たそうな体を動かしてラボを出ていった中堂さん
机の上に広がるカップラーメンのゴミをまとめながら、ずっと俯いている久部くんの様子を伺う
もしかして、会話が聞こえてしまったのだろうか
表情がいつもより暗く見えた
『く、久部くんご飯は?食べた?』
久部「あ、はい食べました」
『そっかそっか!』
久部「あ、あの、あなたさん」
『…』
久部くんが意を決した顔をして、所長室に足を踏み込もうとした時
後ろから東海林の大きな声が響いてきた
東海林「いやー!おなかいっぱい〜!ちょっと食べすぎたなぁ」
三澄「あれ?久部くん?何してんの?」
久部「あ、いや」
『おつかれ〜!』
久部くんが1歩足を引いたので急いで所長室から出て自分の席へとつく
ごめん久部くん、何か言おうとしてたけど、今は逃げさせてもらいます
なるべくいつも通りを装って
『ごめん久部くんなんだっけ?』
って聞き返すけど、頭を数回かいた後に
「なんでもないです」
と返されてしまった
そりゃそうだ。夕子やミコトがいる前で言えないもんね
てか何を言おうとしてたかっていう問題なんだけど
あの空気感は多分仕事じゃなくて私用についてだと思う
東海林「さっ!午後も張り切ってこー!」
三澄「午後は解剖入ってないよね?」
『緊急が入ってこなかったら無いね』
三澄「今日は定時で帰りたいなー。」
東海林「なに?男?」
三澄「違いますー!家族でご飯行く約束してるんだよね」
『いいね〜!ミコト父帰ってきたの?』
三澄「さぁ?今はどこにいるんだか」
東海林「放任主義だねぇ笑」
いつも通りに話をしているとラボに神倉さんが入ってきた
『あれ中堂さん行きませんでした?』
神倉「あぁ来ましたよ」
三澄「また何かやらかしたんですか?」
神倉「いやいや前回中堂さんが解剖した結果を刑事さんが聞きに来るらしくて」
東海林「毛利さん達?」
神倉「それが警視庁の人だって言うんですよ。いやぁ、怖いなぁ、中堂さんちゃんと対応できるのかな」
三澄「もしあれだったら私が行きます。無理そうであれば連絡ください」
神倉「そうして貰えると助かります」
『警視庁って捜査一課とかですか?』
神倉「あ、いや、なんだっけな。き、きどう?みたいな」
『あ!機動捜査隊ですね!』
久部「あぁ、あなたさんの元彼がi」『ちょっ、!久部くん何余計なこと言ってんの!!』
久部くんが元彼という単語を発してしまった以上戻れることはできません。釘を刺すのが遅かった、
夕子がきらっきらな顔を私に向けてくる
元彼が公務員だってことは2人に言ってたし、別れた原因も根掘り葉掘りと聞かれたので大抵の事は把握してる2人
東海林「ちょっと!まさかあの人なの!?」
三澄「警察官、いや確かに公務員だけど、そこは警察の人って言ってよ?笑」
神倉「ほぉー、んじゃここはあなたの名字さんに任せた方がいいですか?」
『いやいや、いいです。大丈夫ですほんとに。』
東海林「てかなんで六郎は知ってんの?」
『あぁ。この前ねストーカー捕まえてくれたのが元彼だったの』
東海林「何その少女漫画的な展開は!?」
『別になんもないから』
三澄「へぇ〜?神倉さん私やっぱり中堂さんの代わります」
東海林「はい!私も臨床技師として参加します!!」
『いいいい!大丈夫だから!中堂さんで!』
東海林「だって!気になるじゃん!!」
『普通の人だから、ね!』
三澄「久部くんどんな人だった?」
『何聞いてんの!』
久部「んー、知的って感じです。賢そうで、真顔と笑った顔にギャップを感じました」
『なに真面目に応えてんの久部くん』
東海林「うーわっ最高!ミコト!見に行こ!!」
『JKみたいなノリやめて!神倉さんも止めて!』
神倉「いやまぁ私はなるべく穏やかに解剖結果を伝えられればいいのでなるべく三澄さんの方がいいと思いますけど」
『ダメでしょ!中堂さんが担当したんだから!ね!』
三澄「神倉さん私たちいつでも準備満タンなので。よろしくお願いします」
神倉「わかりました」
『神倉さん!?』
ノリノリの夕子とミコトに『余計なこと言わないでよ?』って釘を刺してから
私はかずくんに会いたくないので資料室に逃げようと思います
今日の業務は一通り終わったし、やることないから資料室の整理でもしようかと。
神倉さんに一言伝えてからスマートフォンとお気に入りのミステリー小説をポケットに忍び込ませて足を運んだ
俗に言うサボりというやつだ
中堂さんもよくここでサボっているので、防犯カメラに映らないとっておきの場所は見つけてある
資料室にはこれまでの解剖結果や、大学の教授が出版している本、毒に関する分厚い本が沢山並んでいる
ほんとは私は文庫本ではなく、こういった本を読まないといけないのだが
英文は見てるだけで頭が痛くなるのだ。
うん、しょうがないしょうがない
資料室の奥の奥で折り畳みの椅子に座って30分タイマーをセットしてから早速小説を読んでいた
ミコト達、余計なことしてないといいけど
そんなことを片隅で思っていると
久部「あれ。あなたさん居た」
『びゃぁっ!?』
久部「え?え?あれ、そんな驚かせちゃいました俺」
シーンとした空間の中にいきなり久部くんの声が聞こえてきたので思わず変な声を出してしまった
えぇ?ドア空く音したぁ?サボってるのバレたし、
『びっっっくりした!!!』
久部「えぇ?俺そんな忍び足で来てないですけど笑」
『ドアの音した?』
久部「あぁ。そういやこの前そこのドア油塗ってましたよ?」
『うわぁー、んじゃもうダメだここ』
久部「めちゃくちゃサボってるじゃないですか笑」
『息抜きも大事だろクソがって中堂さん言ってたから真似してみた』
久部「絶対クソがって言いたいだけじゃないですか笑」
私の隣の地べたに座り込む久部くん
なんだ。久部くんもサボりに来たのか
はいこれ。
なんて水のペットボトルをくれる久部くん
ほんとにこの子はどこまで優しい人なんだ
『ありがとね』
と言いつつ、またもや無意識に久部くんの頭に手を伸ばしてしまう
『だ〜っ、ほんとごめん!また久部くんにセクハラしちゃったよ』
久部「いやもう慣れましたよ。東海林さんもミコトさんもたまにしてくるんで笑」
『嫌なら言ってね、ほんとに!なんだろうね久部くんの頭って丸っこくてサラサラしてて撫でたくなる頭なんだよね』
久部「撫でたくなる頭ってなんなんですか笑」
久部くんと目が合ったから私はすぐに目を逸らした
もう、なんなの私!!!
なんで逸らしたくなっちゃうんだろ
意識しすぎ、?これは、私の意識し過ぎなのではないか!?
普通の会話だったのに!久部くんと目が合うと心臓が人跳ねする
久部くんも来た事だし、仕事をしようと声をかけて
本の上に溜まってる誇りを払ったり、上の方に積み重なっている本を整理をする
久部「…かずくん。来てますよ」
『あー、かずくんやめて?警視庁の志摩さんね?笑』
久部「会わなくていいんですか?」
『会いたくないからここ来てんのー』
久部「俺も。あなたさんの元彼に会いたくないから資料室に来ました」
『ふふ、なんでよ。意外と気合うかもよ』
久部「合いたくないですよ
多分俺絶対顔に出るんで。睨みつけちゃうと思うので、」
『睨まないで!?笑』
そんな会話をしながら、背伸びをして上の棚に置いてある本を取ろうとした
うわぁ、これギリギリ届かないやつだ。
あと数cm高かったら余裕で届くのに
小さくジャンプをして本の角に指が届いた時、それよりも高い棚から本が数冊ほど落ちてきた
それも全部分厚い本で、当たると痛そう。
そう考えているのに避けるほどの反射神経は私にはない
目をギュッと瞑って次にくる衝撃に耐えようと構えていた時
私の身体は久部くんによって包まれた
ドサドサと本が床に落ちる音がしたのでゆっくり目を開けると痛そうに顔を歪ませる久部くん
久部「……あなたさん大丈夫ですか!?」
『え、や、久部くんこそ!?い、痛くない?怪我してない?』
久部「いやいや俺は大丈夫です。意外と石頭なんで」
『ほ、んと?大丈夫?』
久部「多分たんこぶにはなると思いますけど。角じゃなくて良かった」
『なんか支障があったらすぐに病院行ってね』
久部「わかりました」
『…えっと、いつまで、こうしてれば、?』
未だにすぐ近くに久部くんの顔が今にも心臓がとび出そう
久部くんにこの音が聞こえなければいい
聞こえて欲しくない。
久部くんの胸板を押して距離を取ろうとしても、力強く再び抱きしめられる
顔、見られない体制で良かった、、
『久部さん?……おーい、久部くん。ろくろーー』
久部「あなたさん俺のこと避けてます?、よね」
『え、あ、いや!』
久部「大丈夫です。分かってます。この前、間違えてアルコール入った時に、俺変なこと言いました、?
あんまり記憶が曖昧でハッキリとはわかんないんですけど、もし失礼なこと言ってたらすみません」
『えっとですね、、、えー、私のことがめっちゃ好きだと。後はこれからめちゃくちゃアピールするんで覚悟してくださいって』
久部「:……………思った以上に酷かった、」
ゆるゆると、久部くんの力が抜けてって最後には床にしゃがみ込む久部くん
両手で顔を隠してるけど間から見える耳は真っ赤に染ってる
その光景に声を鳴らして笑いながら久部くんの隣に座る
久部くんは可愛いねぇ〜
こんな純粋な子が?私のことを好き?何かの間違いなのではないか
久部「あなたさんは、俺の言葉を聞いて、、避けてたんですか、?」
『…避けてないよ?』
久部「いやいやいや絶対嘘です嘘。今日全然目が合わなかったですもん」
『そ、そう?』
久部「そうです。……引きました、?」
『引いてない引いてない!嬉しかったよ』
久部「気を遣わせてしまってすみません」
『気遣ってない!ほんとに!
…ほんとに、遣ってないんだよ』
久部「きまづい?」
『気まづいっていうか、違くて』
久部「違くて?じゃあ、なに?」
『……だぁーっ、その顔!』
久部「え、なに顔?」
そんな、男らしい目つきで覗き込まれたら心臓がドギマギしてしまうのだ
愛のある告白を真正面から受け止めてしまったからか。
まぁお酒入ってたけど!!
『…意識、しちゃってんの』
久部「へっ?え?なに?」
『久部くんってこんなかっこよかったっけ、とか手綺麗だなぁ、とか、、、、、ごめんなさい』
久部「…え、あ、いや、お、男として見てくれてるって事ですか」
『…』
久部「無言は肯定として受け取れって東海林さんが言ってました」
『…ノーコメントで』
手の甲を口元に当てて口を綻ばせてる久部くん
あ、可愛い。
今めっちゃ心臓ぎゅんってなった
これやばいなぁ、
久部「今度ラボが休みの日に出かけません?」
『2人で?』
久部「ふたりで」
『えーどうしよっかな』
久部「えぇっ!?え、そういう感じじゃなかったんですか今の流れ!」
『あははっ!うそうそ!今度の休み行こうね、デート』
久部「でっ、、、はい。」
真っ赤に染った久部くんの頭をぐしゃぐしゃにしてから資料室を先に出る
東海林に「なーんか怪しい」とボヤかれるのもそう遠くないのかもしれないな












編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。