────タタタタッ
人の気配を探り、誰も居ないホテルの廊下を
選びながら誰かと鉢合わせないよう駆け抜ける
⋯⋯⋯隠密行動の観点的に足音は立てちゃ
ダメなのは分かってるんだけどさ
殺せんせーにお洒落して来いって言われたから
歩いたらコツコツって音が鳴るタイプの靴
履いてきちゃったんだよ、しょうがない
走りながら周囲の気配を探る
プロの殺し屋だと殺気を消すのが上手いけど、
どうしても殺気を消そうとしすぎて
逆に違和感が出てしまう
とは言え、それも気配察知能力が高い人で
なければ気付けない程度の微弱な違和感
ま、普通に殺し屋やってたら
自分の殺気を消す能力に粗があるなんて
気付いてないだろうね
私だって、死と大親友と言っても過言ではない
呪術師と言う仕事をやっていなければ
こんな察知能力は身に付くはずもなかった
そんなことを考えれば、ふと呪詛師らしき
呪力が見つかった
場所は、一つ上のフロアの一部屋
エレベーターを無視し、階段を使って
上の階に駆け上がる
呪詛師数人の気配がする角部屋の前に着き、
術式の応用で鍵を開けてドアを開け放つ
中に居た呪詛師たちは、豆鉄砲を食らった鳩の
ような随分と滑稽な顔になっていた
顔を見合わせる呪詛師たち
何をしていたのかは知らないけれど、
机に多数の一級術師の顔写真と情報が
載せられた書類がある辺り、
厄介な呪術師を排除する計画を
立てていたんだろう
向こうが戦闘態勢になる前にまず一人
一番近くに居た奴の腹部目掛けて回し蹴り
お高いホテルと言う場所柄的に、
あまり大きな音は立てない方が良いし、
流血沙汰にもしない方が良い
───と言う訳で、珍しく雑魚相手に
初手から術式を使ってみることにする
私の持ってる呪具、刀とか短剣とか
刃物ばっかりだしね
〝背丈を誤魔化す術式〟と言う定義を解く
定義が変われば、当然術式の効果も消える
誤魔化していた背丈が元に戻り、
どこからどう見ても未成年の見た目に戻る
勘の良い奴はそこで私が神凪あなたの下の名前だと
気付くけど、まぁ普通は気付かない
今度はその定義を改め、
術式を〝対象の周囲の呪力を操作する術式〟に
変更する
パチンと指を鳴らし、呪詛師たちの
鼻と口付近の重力を圧縮して
息を吸えないようにする
ほんとは捻り潰しても良かったけど、
流石にちょっとグロテスクだし
暫くすれば、息が吸えずに全員が窒息死し、
バタバタと倒れて行った
突然の乱入者にパニックになり、
術式を使うことなく死んでいった呪詛師を
見下ろしながら、術式を
〝背丈を誤魔化す術式〟に戻して部屋を去った













編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。