第28話

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2018/07/31 04:06

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「だから、来て」




だから来て、って言われても......。




「......他のお店じゃダメなの?」


「......うん」




WINGSだったら顔も利くし、って事?




「......わかった」


「え......いいの?」




応じてる私もどうかと思うけど




自分で言っといて“いいの?”って言うのも
どうなのよ。




「......WINGSで、会いたいんでしょ?
だったら行くしかないじゃない....」


「ん......ありがとう」




お礼もきちんと言えるのに




なんであんなにチャラいんだ......。




「......何時に行けばいい?」


「何時でも平気....?」


「....うん」


「....じゃあ、9時。9時に店の裏手に来て。
VIP専用の入り口があるから、その前で」


「......わかった。9時にお店の裏手ね?」


「ん」




そこでようやく、
私の手がポケットから出て来た。




「......今日は、ホントにごめん。酷くして」


「......ん」




いいよ気にしないで、なんて
言える訳もないけど




何故か怒ってもない私。




嫌悪感もないし




……傷付いてもいない。




「......アイツ、同じ職場?」


「....違う」


「....また会う事ある?」


「たぶん....ないよ」


「......それ聞いて安心した。
それじゃあまた、金曜日」




......あ。




ジョングクの手が、するっと離れた。




弱々しい笑顔を見せたジョングクは




すぐに背中を向けて、来た道を戻って行く。




強気だったり、弱気だったり。




生意気だったり、素直だったり。




....チャラかったり、きちんとしてたり。




どれがホントのジョングクなの....?




寒そうに背中を丸めて




ジャケットのポケットに両手を入れてる
ジョングクの後ろ姿を見つめても




答えなんて出ないのはわかってる。




それに




どうして私に執着するのか、




どうして私を欲しいと思うのかも
気になるけど




ジョングク本人がわからないのに




私が考えたところでわかる訳もないし。




......ジョングクは、謎だらけ。




女の子引っ掛けて遊びたいだけなら




私じゃなくたっていいじゃない。




......なのに、考えちゃう私。




ジョングクの事が気になってるのは確か。




それがどうしてかはわからないけど。






「私も充分謎じゃんね......」







ジョングクの後ろ姿にそう呟いて









アパートの階段を昇った。





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