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第3話

大人になった
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2025/08/31 00:46 更新
仕事終わり、宏人と綾風はレストランでディナーした。空白だった月日を感じないくらい、あの頃の二人にすぐ戻っていた。
「宏人、それ、りんごだよ。食べちゃだめ」
「あ、そうか。ありがとう。綾風が言ってくれなかったら、またうっかり食べちゃうところだったよ」
ほんとに、あの頃と変わってない…。待ち侘びていたこの幸せに、互いに喜びを噛み締めていた。
レストランから出た二人は、宏人の車に乗り込んだ。
「綾風…このあとって、すぐ帰らなくても…大丈夫?」
彼らは、すべての運を味方につけていた。今日は金曜日。明日は互いに休み、しかも決まった予定はない。この状況で帰るという選択肢なんて、綾風にあるわけがない。
「うん。明日、休みだし……」
綾風の、期待してるのを隠しているけど全く隠しきれていない姿の何てかわいいこと!宏人の気持ちも抑えられるわけもない。
「綾風」
宏人は綾風を抱き寄せてキスをした。綾風もすぐ宏人の首に腕を回す。宏人の手が綾風の髪、頬、首、腕、腰へと伸びる。綾風もたまらなくなって、
「まだ車だよ…部屋、連れて行ってくれない…?」
と、思わず言葉にする。
「そうだね……」
宏人は車を走らせて、自宅へ向かった。宏人は右手だけで運転し、左手で綾風の手を握った。しばらく手をつないでいたが、綾風はほんの出来心で宏人自身に手を伸ばした。
「…おいっ」
余裕のない声にきゅんとする。それは、想像以上に硬く、大きさを増していた。
「このあと…どうなっても知らないからな」
そう言われて、はっとしたように綾風は手をそれから離した。
「もう遅いよ。俺も意地悪しないと。綾風だけなんてずるい」
互いに、あの頃より大人になっていた。宏人がこんな顔するなんて…。いや、まず、自分があんな大胆な行動をするとは……あの頃の綾風より、積極的になれていた。
部屋に着くと、宏人は綾風に中に入るよう促した。
「どうぞ」
「…お邪魔します」
二人が部屋に入ると、宏人が部屋の鍵を閉めた。
ドキドキする綾風をよそに、宏人は、
「適当にそのへん座って。何か飲む?」
と声をかける。
「ありがとう…今はいいかな」
部屋に入るなりベッドに押し倒されて…とかなんとかじゃないの?綾風は少し不安になった。でも、宏人のいつも自分を気遣ってくれるところが好きで、変わっていなくてうれしくもあった。
宏人はスーツを脱いで、綾風の隣に座った。
「あれ?さっきの続きしないの、とか思ってる?」
綾風はぎくりとした。でも、自分から求めるのは恥ずかしいし、どうすればいいのかと考え、
「…う、ん。でも、私にはそんな魅力がないから、しょうがないよ」
と、寂しい笑顔を作って返答した。
すると、宏人も寂しそうな表情をした。
「…そんなわけないだろ。誰より魅力的な子が目の前にいて、平静ぶるのがどんだけ大変だったと思ってる?」
「え…」
「意地悪して焦らしてやろうと思ったのに…もう俺が待てない」
宏人はさっきより強引に綾風を抱き寄せて唇を塞いだ。そして舌を綾風の口にねじ込んで、ソファに押し倒した。
「ふっ……ん」
宏人と綾風は、今年で共に23歳。もう大人になった。こんな、ちょっと乱暴なこと、あの頃の宏人だったら、していなかっただろう。だってあの頃は、手をつないで見つめ合ってキスをするだけで、やっとだったのに…。初めて身体が重なった時の、まあぎこちなかったこと。
「綾風、会えなかった間、他の奴と……シてたのか?」
「ううん、シてないよ。宏人以外なんて…無理だった」
「ほんと…?俺も一緒だよ。綾風以外なんて、考えられなかった。そんなかわいいこと言われると、もう……」
宏人は綾風の全身の至るところに舌を這わせていった。服も脱がせようとすると、綾風が小声で言う。
「ひ、ろと…ベッドがいい……」
宏人は動きを止め、綾風を抱えて寝室に向かった。
ベッドに綾風を寝かせると、自分のネクタイを取って綾風のシャツにも手をかけた。
「…いやだ?」
「ううん…宏人、大人になったね…」
「綾風もなったよ。誰にも汚されてなくて本当に良かった」
宏人は綾風に優しくキスをして、それから全身を愛撫して服を脱がせていった。行為に至るまで、あの頃と比較できないくらいスムーズだった。初めて行為をした後は、「上手くできなくてごめん」と何度も綾風に謝っていた。しかし綾風はそんなことはどうでも良くて、宏人と一つになれたのがうれしかった。それは今も変わらない。また一つになれたことに、互いに幸せを噛み締めていた。

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